あ、着いた。久しぶりだな。ここに来るの。
俺は元カノからの連絡があり地元まではるばる五時間かけやってきた。
「早く着きすぎたな」
時計を見ると11時、お昼集合なのにやけに早くなってしまった。やっぱ焦ってんのかな。俺。最悪な別れ方したしな。
「久しぶりだね、ゆう」
え、そこには彼女と一緒にいる元カノがいた。
7月7日、七夕
後程編集するので少々お待ち下さいm(__)m
「付き合ってくれないかな?」
満面の星空の下で彼女が最初に発した言葉。
彼女は赤面を隠そうともせずにこちらを真っ直ぐに見つめる。…それはずるいよ。
「先輩、俺もう死ぬんです、寿命らしいですよ」
本音の彼女を前にずっと隠してきた真実を俺も話す。
「答えになっていないよ、私の告白の答えを聞かせてほしいんだ」
相変わらず先輩はかっこいい。俺を助けてくれた時もこうだったっけ。
「あんたなんか生まなきゃよかった!さっさと私の前から消えなさい」
え、母さん、そんなこと言わないでよ。
俺、出来る努力はしたよ?
テストではずっと学年一位の万年満点。運動だって甲子園まであと一歩のところ。何がダメだったの?
「自分が選ばれた人間だと勘違いするからそうなるんだぞ蒼太ぁ」
「親父ぃ、いてぇよぉ!もう殴るなよぉ」
あぁ、不幸だ。神様、俺を殺してください。俺、自分で死ぬのも怖いどうしようもないくずなんです。
ガチャ
「こんにちは、山崎さん」
は?
会長は俺を殴ろうとする手を止め、家の外まで俺を連れ出す。
「君ほど優秀な人間がいつもボロボロな理由がわかったよ。もう大丈夫だ。」
それから会長は、会長だけは、俺に優しくしてくれた。
そんな会長が優しさではなく愛をくれた。俺がずっとほしかったものをずっと欲しがった人がくれた。…もうこれ以上ない幸せだ。
きっとこの夜空は祝福してくれてんだろうな。
「先輩、先輩まで泣かないでくださいよ」
「それは、無理だな。実った恋がこんなに一瞬で、こんなに悲しい終わり方をするなんて」
あぁ、不幸だ。神様、どうか俺を生かしてください。俺、自分一人じゃ生きられないどうしようもなく弱いんです。あと少しだけ、あと数回だけ彼女とこの星空を見に来る時間を俺にください。
結婚してから三年がたった。私はあなたと赤い糸で繋がっていて、今もそれは変わらない。と思ってた。
最近、彼氏が私に見向きもせずに夜遅くまで仕事仕事って。それ、本当に仕事なの?何も話してくれないじゃん。私って都合の良い女なの?
「あ、雨降ってる」
でも、帰りたくない。家に帰ると思い出すから。今でも思い知らされるから。自分の非力を。救えなかった後悔を。
ブー ブー ブー
電話か。誰だろ。
「え、」
着信の相手は結婚した妻からだった。
「なんで、」
俺は通話に出るより先に走って家に帰る。
ガチャ バンッ
「ハァ、ハァ、彩乃!いるのか!?」
「うん、いるよ、遅かったね」
「…、やっぱり、ハァ、いるわけないよな」
え、なんで気付かないの?
目の前にいるのに。
あ、全部思い出した。
あなたと喧嘩した次の日に私。
轢かれたんだっけ。
あれ、あなたの薬指の指輪から赤い糸が出てる。
その赤い糸は私の薬指の指輪まで一直線に繋がっていた。
神様、こんな運命受け入れられないよ。
俺には彼女がいる。
「美味しいね緑くん」
奏はにっこりと満面の笑みを浮かべながらもぐもぐとステーキを食らう。
高くもない飲食店で二人、ちょっとした贅沢をする。
……幸せだ。
---出来るならあと一時間こうして一緒にいたかった。話したかった。でも、それはお互いに言わない約束をした。だからーー。
あぁ、全てが終わる。
「はっ」
時計を見ると針は7時を指していた。仕事の時間だ。顔を洗い支度をする。朝ご飯はインスタントのカップラーメン。ステーキ、食いたいな。
家を出て会社までの道を見渡す。今日という道の先を乗り越えて俺は彼女に逢いにいく。
夢の中でしか逢えない彼女に逢うために今日も俺は社会の奴隷だ。