わたしが2歳くらいのころ
母が家計簿をつけていたとき
わたしはそのうしろで
テーブルの上にひろげていた
母がだしていた家の小銭で
遊んでいたらしい
わたしがおとなしくしていたので
母は非常に集中できたようだ
一区切りついたので
わたしの名をよび振り返ると
そこにわたしの姿はなかった
母は青ざめた
玄関には靴もなかったので
一人で外にでていったのだろう
慌てて外にでると
ちょうど通りの角から
わたしが歩いてくるのが見えた
わたしはすごい笑顔だったらしい
なぜなら
わたしは右手にガム
左手におつりと思われる10円玉を
にぎりしめていたそうだ
母が家計簿を確認すると
ちょうど50円足りなかったらしい
いつも行く駄菓子屋のルートは
しっかりと記憶されていたようだ
2歳児をあなどってはいけない
自分は記憶にないけど…
5年生の図工で
焼物でマグカップを作る
という授業があった
そもそもわたしは
家でマグカップを使って
何かを飲むということがなかったので
出来上がったものは
ぺんたてにしようと思った
ならばかわいいものを!
と、わたしが作り始めたのは
2頭身のかわいいキャラが
泥棒のかっこをして
でっかい風呂敷をしょっているという
およそマグカップという概念から
かけ離れた作品だった
当然、先生からクレームがついた
しかしわたしは
このキャラ部分が持ち手で
上を丸く開いた風呂敷がカップだと
力説した
どうみてもマグカップではない
先生は
かたち的に普通のマグカップより
焼いた時に割れてしまうと思うけど
それでもこの作品でいいのか?
と、苦言を呈したが
わたしは譲らなかった
結局
何人かの作品が割れてしまうなか
わたしの泥棒マグカップは
キレイな形で焼きあがった
先生は優秀作品として
この泥棒マグカップを
教室に展示したのだった
むすこはゲームが大好きだ
どれくらい好きかというと
むすめたちがゲームを始めると
ずり這いをしながらやってきて
テレビ画面の前に立ちはだかるのだ
むすめたちはブーイングである
特に太鼓の達人になると
むすめのバチを奪ってやろうとするのだ
むすめたちから苦情がきたので
わたしはダンボールで太鼓を作り
本物のバチをむすこにわたした
2,3回たたいてみたむすこだが
じっとむすめたちの太鼓をみると
ふたたび奪おうとした
騙されないようだ
さらなる苦情がきたので
わたしは
壊れて、しまっていた古い太鼓をだしてきて
横に並べてみた
コードもゲーム機までつなげてあるように
偽装する
むすこは喜んでたたきはじめた
が、1分もしないうちに怒りはじめ
やっぱりむすめたちの太鼓を奪って
たたきだすのだった
ちなみに
つながってる太鼓をあたえたときは
おとなしくたたいているのだ
ほんものがわかる乳児
小さいころから
空を飛ぶことに憧れていた
ほうきにまたがって走ってみたり
犬小屋の屋根から
手をバタバタと動かして
羽ばたくまねをして飛び降りてみたり
高くこいだブランコから
人の家の高い塀から
木の上から
公園のトイレの屋根から
子どものころは
とにかく飛んでいた
今はもう
そんなことはしないけど
たまに夢で
空を飛んでいる
やっぱり手をバタバタして
羽ばたくまねをしないと
夢なのに飛べない
でも
高いところから見る景色は
とても気持ちが良くて
今でも
空を飛ぶのに憧れている
大雨が通り過ぎて何日か後
ようやく晴れたので
むすめと散歩に出かけた
いつもの散歩コースのグラウンド
ぐるりと囲むように側溝がある
大雨でそこに水がたまっていたのだが
おたまじゃくしも所狭しとたまっていた
うじゃうじゃと蠢くおたまじゃくし
むすめは大喜びで
砂場遊びのバケツとおたまを持ち出した
20匹以上のおたまじゃくしを
連れて帰ろうとするむすめを説得し
5匹だけバケツにいれて
アパートの階段の踊り場に置くことにした
毎日階段を通るたびに
バケツをながめては
「はやくかえるにならないかなぁ」
と心待ちにしていたむすめ
前足が出て
後ろ足も出てきて
「もうすぐだね!」
だいぶかえるらしい姿になってきた
おたまじゃくしを
嬉しそうに眺めていた、次の日
バケツの中から
すべてのおたまじゃくしが
いなくなっていたのだった
がっくりとうなだれるむすめ
夜の間に
かえるになって
逃げてしまったのだろうか…
しかし、むすめは顔をあげると
バケツとおたまをもって
ふたたび側溝へとむかったのだった