2番目のむすめが
まだ小さいころ
夜寝るときは
ダンナ、2番目のむすめ、わたし
と、川の字になって布団に寝ていた
それは夏のある夜
わたしはなんの前触れもなく
深夜に突然目が覚めた
そして
なんの気はなしに
隣で寝ている2番目のむすめの方を見た
仰向けに寝ていたむすめは
なんと
左あしを高々と天井にむけて
あげていたのだ
わたしは
咄嗟に布団から転がり出た
それと同時に
わたしが寝ていた顔があったあたりに
むすめの踵落としが炸裂
間一髪だった
2番目のむすめの寝相に
恐れをなしたわたしは
少し離れて寝たのだった
高校生のとき
夏になると球技大会があった
どれか一つの球技に参加し
最後はクラス対抗の綱引きで終わる
わたしはソフトボールに参加した
炎天下のなか
球技大会が行われ
最後の綱引きが終わったあと
みんながTシャツの袖をまくりながら
日焼け自慢をはじめた
くっきりと
袖のところで色がわかれていて
すごいねーと
色の黒さをくらべあう
そして、みんながわたしの方をみた
わたしはもともと地黒なので
そんなわたしは
さぞや黒く日焼けしただろうと
思ったのだろう
友人が自分の腕と
わたしの腕を並べてみる
おや?
たいして変わらない黒さだ
友人はわたしの袖を捲ってみた
そこには
袖のないところと変わらない
黒い肌があった
どうやら
これ以上は焼けようのないくらいの
地黒だったらしい…
しばらくの間
わたしの地黒は
クラスで伝説のように語られるのだった
むすめの歯が生えだしたころ
むすめは
甘いものを食べたがるようになった
むすめを虫歯にならないように
したいわたしは
できるだけおやつの時間以外は
甘いものを食べさせたくないのだが
ダンナは家に帰ってくると
ずっとお菓子を食べているので
どうしても一緒に食べてしまう
せめてむすめが夜寝てから
食べるようにしようと
ダンナと決めた
その夜
わたしたちはむすめが寝てから
ひみつのお菓子パーティを
したのだった
次の日の朝
むすめは部屋から起きてくると
なぜかまっすぐゴミ箱にむかい
中をあさりだした
「きのう、ちょこたべたね」
動かぬ証拠とばかりに
包み紙を持ってきて
同じ数のチョコを要求してきたのだ
ダンナとのお菓子パーティは
一日で終了したのだった
2番目のむすめが
オムツがとれてすぐのころ
出かける前は
必ずトイレに行くよう
声をかけていたのだが
毎回
「でない!だいじょうぶ!」
と、トイレに行くのをいやがり
でかけるまで一苦労だった
それがある日を境に
素直にトイレに行くようになった
…おかしい
急におりこうさんになるわけがない
その日も
出かける前に声をかけると
「はーい」
元気に返事をして
2番目のむすめはトイレにはいっていった
わたしはこっそりと
ドアの隙間から中をのぞいてみた
そこには
フタの上にズボンも脱がずに座り
時間をつぶすむすめの姿が…
当然
わたしに叱られることになるのだった
ズボンを脱ぐのが
そんなにめんどうだったのか?
なんてムダな隠蔽工作…
一人暮らしをしていたころの
ある夏の日
部屋でごろ寝をしていたら
前に蚊にさされた足が
ぶり返して痒みだした
たしかテーブルの上に
虫刺されの薬があったはず
半分寝ぼけていたわたしは
手だけ動かして
テーブルの上から薬をとり
足に塗った
しかし
ちっとも痒みが治らない
しかも塗ったあとの
スースーした感じもない
わたしは顔だけおこして
テーブルの上を見た
たしかに
虫刺されの薬はあった
手の届かない奥のほう
そして手前にあったのは
アラビックヤマトのりだった
「………」
わたしはふたたび横になり
しばらく動けなかったのだった