ゆき

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3/17/2024, 3:32:57 PM

___僕は泣かない 。だって約束したんだ 。


初めて出会ったのは、小さな喫茶店 。
元々そこの従業員だった君は 、肩まで綺麗に切りそろえられた髪を靡かせながら接客してたね 。
僕はあまりの美しさに目を奪われた 。
それだけじゃなくて 、余りにも綺麗な瞳で僕を見つめるから初めて恋に落ちる音を僕は聞いたんだ 。
恋が結ばれる日は僕が思ってたよりも長くて 、ただの常連の僕なんか君の視界に入れても恋愛対象にはならないな、って嘆いてた時に君は笑って言ったんだ 。
いつも通りの言葉なのに、ときめいたのはなんでなろう 。
「 おかわり 、いりますか ? 」
いや、その後の言葉に僕は驚いたのかもしれない 。
「 私が上がるまで 、珈琲ご馳走させてください 。」
ああ、やっと実ったってその時初めて気づいたんだ 。
今でも君はなんで僕に恋したのか教えてくれなかったね 。
そこから月日が過ぎるのは早かった 、春が来て、夏に海を見て、秋には美味しものを食べて 、冬にはベッドの中で語り明かして 。
5度目の夏が来る時に、僕たちの天使にも出会えた 。
天使の名前に僕も君も悩みに悩んだね 。
人からしたら在り来りな名前だったのかもしれないけど、僕たちにとってはとても大事で素晴らしいものだったんだ 。
それからまた季節が過ぎて、ついに僕たちの元を天使が世界へと飛び立った時だった 。
君に病が襲いかかったんだ 、それは急で残酷で僕は泣くことしか出来なかった 。慰めるのも何か違う気がして、ただ泣いてる僕に君は言ったね 。
「 私が死んだ時はどうか泣かないで 、笑顔で見送って 。」
「 約束よ 。」
その声は酷く震えていて、僕は何度も頷きながら君の分も未来の僕の分も沢山泣いた 。
そして、ついにその時が来てしまった 。
僕は泣かない 、約束したんだ 。そう、約束を 。
ボロボロと泣く大きくなった我が子を抱きしめながら宙を仰ぐ 。ついに君が天使になってしまったんだと実感してしまった 。
ツーンと鼻が痛くなって慌てて顔を隠す 。
今の僕を見て 、君は約束を破ったのね 。と笑うだろうか 。きっとそうだろう 、これからの人生君がいないなんて僕は耐え切れるだろうか 。
いや、君と初めて会った時 。君が綺麗な髪を靡かせ僕に注文を聞きに来た時 。君が我が子を大切に抱き締めてた横顔 。全部、全部僕の中で生きている 。
いつか、誰からも君がいた事を忘れられたとしても僕がいる限りは終わりはしないんだ 。
キュッと唇を噛み 、歪な笑顔で君が眠る棺へと歩み寄った 。下手くそでも僕なりに君との約束を守ったよ 。
空からこんな僕を見守っててください 。

fin

3/2/2024, 9:34:57 AM

「好きです 。」
今日私は、親友の彼氏に告白をした 。
始まりは1年前まで遡る、私が移動教室へ向かう時だった 。受験勉強に追われる毎日で心身共に疲弊してたのだろうか、階段を踏み外し盛大に転けてしまった 。
誰もが唖然と私を見ている中、親友の彼氏である中山祐一が手を差し伸べ一言 、「大丈夫?立てないなら俺に捕まって 。保健室まで連れてく 。」
たったそれだけだった 。たったそれだけ良かった 。私が恋に落ちるのにそれ以外の理由はいらなかった 。
中山祐一は、スポーツ万能ではあるが学力は中の上くらいで、他の男子と良く絡むが異性と絡む姿は見たことがない所謂 、今どきの男子生徒だった 。
そんな彼がなぜ、私の親友に恋して、告白して、付き合っているのだろう 。なんで、私じゃなくて親友なのだろう 。そんなモヤモヤした自己中な感情が心の中や頭の中を支配した。
そんな事を思っていると思っていない親友の金山美優は、今日も地味な眼鏡を押し上げ隣で読書を楽しんでいた 。今までは、鼻にかからなかったその行動も今ではとてもインテリぶっていて腹が立つ 。
そんな感情をかき消すように、私は美優に声をかけた 。
「 最近、中山くんとは上手くいってるの ? 」
たったそれだけの質問で誰もいない放課後の教室画静かになった 。騒がしいのは外で部活をしている野球部やサッカー部だけに感じた 。
誰もいない教室で2人が黙れば静寂が教室を囲むのは当然の事だが、どこか気まずく感じてしまった 。
「 うん 。ぼちぼちかな 。」
その曖昧な回答に、少し腹が立ったがお得意の作り笑顔でそっかと答えた 。
きっと、最近受験や最後の部活と恋愛の両立が上手くいってないんだろう 。そう私は考えてしまっていた 。
大切な親友の彼氏なのに、自分の欲望が抑えきれないでいた 。
私も、勉強の追い込み時期だ志望校はあと少しの努力で入れると考えて、恋愛をしている余裕はあるのだろうか 。いや、伝えなくては後悔してしまうだろう 。

_____そして私は 。

2/29/2024, 5:17:37 PM

‪✕‬月××日君に会いに行く 。
いつもより早く起きて、いつも通り携帯でネットニュースを見る 。あの大スター選手が結婚報告してネットは盛り上がってるらしい 。僕は、どこか冷めた感情を抱きスマホを閉じた 。なぜ、僕がこんな感情を抱くのかは当然彼女に会いに行く日だからだ 。
どこか気だるい身体を起こしベットから這い出でる 。
特に食欲もわかないので、適当に昨日買った菓子パンを無理矢理口にする。美味しくなかった、というか味がしなかった。彼女に会いに行く日は限って感情が落ちこむ 。そんなマイナスの感情を漂わせながら 、いつも通りせっせと支度する 。まるで作業をするかのように。
「 行ってきます 。」
誰もいなくなった部屋に吐き捨てる様に雑に呟けば、そのまま駅へと直行した 。
歩くのは嫌いじゃない、何も考えずに音楽を聴きながら歩くのはどこか自分に酔ってる気がするけど、この時間が僕は好きだった 。イヤホンを半分こにして歩いたこの道には、沢山の思い出が転がっているから 。
ボーッと物思いにふけていれば、駅に着き改札をくぐる 。電車をいつもの場所で待ち急行列車に乗れば、目的地まであっという間だ 。
そう、今日は彼女の命日 。いつも、笑顔で音楽が好きでニュースを見ては一喜一憂する様な素直な子だった。
「 また来ちゃったよ 。忘れることなんてない 。これからも 。」今度は優しく呟く 。彼女に聞こえてると信じて 。
僕がおじいちゃんになっても列車に乗って会いに来るから、なんて付け足せば恥ずかしくなり誰もいない墓前の前で苦笑した 。誰かの一日には、どうでもいい1日だったとしても、僕にとって今日は残酷な日だ 。
彼女がこの世を去った日 。彼女の笑顔が消えた日 。
そして、僕の希望を失った日 。
今日はやけに天気がいい。君が隣にいたら、「 眩しいね 。」なんて言っていつもの様に笑ってくれるだろう 。
その日がもう二度と来ないのだ、墓前で手を合わせる 。
何を願うでもなく、ただただ彼女へ思いを馳せた 。