ゆき

Open App

‪✕‬月××日君に会いに行く 。
いつもより早く起きて、いつも通り携帯でネットニュースを見る 。あの大スター選手が結婚報告してネットは盛り上がってるらしい 。僕は、どこか冷めた感情を抱きスマホを閉じた 。なぜ、僕がこんな感情を抱くのかは当然彼女に会いに行く日だからだ 。
どこか気だるい身体を起こしベットから這い出でる 。
特に食欲もわかないので、適当に昨日買った菓子パンを無理矢理口にする。美味しくなかった、というか味がしなかった。彼女に会いに行く日は限って感情が落ちこむ 。そんなマイナスの感情を漂わせながら 、いつも通りせっせと支度する 。まるで作業をするかのように。
「 行ってきます 。」
誰もいなくなった部屋に吐き捨てる様に雑に呟けば、そのまま駅へと直行した 。
歩くのは嫌いじゃない、何も考えずに音楽を聴きながら歩くのはどこか自分に酔ってる気がするけど、この時間が僕は好きだった 。イヤホンを半分こにして歩いたこの道には、沢山の思い出が転がっているから 。
ボーッと物思いにふけていれば、駅に着き改札をくぐる 。電車をいつもの場所で待ち急行列車に乗れば、目的地まであっという間だ 。
そう、今日は彼女の命日 。いつも、笑顔で音楽が好きでニュースを見ては一喜一憂する様な素直な子だった。
「 また来ちゃったよ 。忘れることなんてない 。これからも 。」今度は優しく呟く 。彼女に聞こえてると信じて 。
僕がおじいちゃんになっても列車に乗って会いに来るから、なんて付け足せば恥ずかしくなり誰もいない墓前の前で苦笑した 。誰かの一日には、どうでもいい1日だったとしても、僕にとって今日は残酷な日だ 。
彼女がこの世を去った日 。彼女の笑顔が消えた日 。
そして、僕の希望を失った日 。
今日はやけに天気がいい。君が隣にいたら、「 眩しいね 。」なんて言っていつもの様に笑ってくれるだろう 。
その日がもう二度と来ないのだ、墓前で手を合わせる 。
何を願うでもなく、ただただ彼女へ思いを馳せた 。

2/29/2024, 5:17:37 PM