ぬるい炭酸と無口な君
炎天下の中、彼と夏休み旅行。
いまゆる青春?春ではないのでリア充と言っておきましょうか。絶賛リア充中です!
「………」
慣れない道に会話は無い。
無口な彼はただ前だけ見て歩いている。
暑さに言葉さえも奪われてしまったようです。
(まぁ私がここで声をかけても余計暑くさせるだけなので、そっとしときます)
暑いと愚痴を吐く事もない君に自販機で買った
サイダーを手渡す。君は、そのぬるさに疑問を抱かなかったのでしょうか。
「うわぁ!」
泡が溢れ返り、君は濡れている
「一泡吹かせました!やっと声を聞けました!」
ぬるい炭酸と無口な君
私が振ったからぬるいんですよ、それとも...
私の恋い焦がれる熱のせいでしょうか――
波にさらわれた手紙
「今日も尊い、!」
どこの誰かも知らない人を好きになることを
『推し』という。
「大切なお知らせがあります。」
黒背景に白い文字。数字稼ぎなのかガチなのかなかなか読めないラインだ。
「今日で活動引退します」
『大好きだよ。ゆっくり休んで』
送信したお別れコメント。
悲しみの波にさらわれた手紙
「届かないのに…なんでコメントするんだろ」
どこの誰かも知らない人を好きになることを
「推し」というらしい。
推しとは罪深き生き物だ
波の中から見つけてよ
私のラブレター
8月、君に会いたい
夏休みの盛り
別に外出の予定も気力もなく涼しい部屋と
親友になっていた。今時外に出るのは自殺行為にさえ思う。でもふと君に会いたくなった。
別に外出の予定も気力もなく涼しい部屋と
仲良しこよししている。
今時外に出るのは自殺行為。
まぁ案外死なないのかも。
帽子を被って外に出る。
クーラーと白い肌に別れを告げ君に会いに行く
暑さだけに囲まれて友達とは会わない
1人きりの8月、君に会いたい
君に会いたい――
眩しくて
君はいつも輝いていた
私にはそう見えてたよ
みんなに可愛い子ぶって涙を流して
構って貰えて心配して貰えるなんて
「可哀想なわたし」が大好きなんてさ
眩しいよ
そんな風に好きになれたらね
でも私はそんな君が好きだったよ
憧れだったんだもん。憎悪に変わるなんて
思わなかったもん。ましてや殺意なんてさ
眩しい。眩しいんだよ。
目が痛いの。邪魔なんだよ。
眩しくて仕方ないの。
光なんていらないの
私は光の中にはいけない
だってもう未来なんてないんだから――
飛べ
私は飛べない翼を持っている。その翼に飛ぶ事を望んだ事も夢見た事も無い。
「だってどうせ飛べないもの」
諦めながら路地を歩いていると1羽の鳥が
私と同様飛べない翼を持っていた。唯一
違うのは幼稚な所だろうか。鳥はずっと
飛ぼうと翼を羽ばたかせる。
(さっさと諦めた方が辛くないのに…。)
最初はそう思っていたけど次第に私の心も
子供のように野心を帯びた。
飛べ 飛べ 飛べ
その醜い翼に私は願った。まるで自分の羽に
語りかけるように。
「飛べッッ!」
強く願いをぶつけると、1羽の鳥は別世界に
羽ばたいていった。
(私も、飛びたかったな)
もう飛び方も忘れてしまったよ――