ただ君だけ
竜胆色の空模様を見つめていた。
その空模様と君に接点なんて無いのに、
どうして君を思ってしまうのだろう。
穏やかな風と共に時間が流れてゆく。
なのに僕の心はそんな風と平行に並んでいない。
風の平行線を超えて、胸を高鳴らせた。
ただ君だけを求めた。
でも君は同じ色の空の下を生きているのに
君の心は僕の色を失ってゆく。
後付けのように交わすキスは「サヨナラ」を
合図しているようで涙が溢れそうになる。
ただ君だけが欲しかった。
他じゃ満たせない愛を君に満たして欲しかった。
今日もまた君とキスを交わす。
僕の恋は続いているのに、まるでエンドロールも
過ぎてしまった気分だった。
ただ君だけは、新しい物語が始まったようだ――
夢を描け
簡単な道程美しく見える私にとって
夢は季節のように移り変わっていくものだった。
「絶対に叶えたい」
そう思って情熱に溢れていたのに
気づけば叶えたい理由さえも忘れてしまった。
夢が夢に塗り潰される毎日が段々と変わった。
夢が白紙に塗り潰されてしまった。何一つ描け
なくなってしまった。鉛筆を落としたまま、
消ゴムを握り締めて、白紙に色が落ちれば
見つめるだけで消してしまっていた。
「どうせ無理だ」
この一言が私の鉛筆を踏みつけた。
ある日、夢の無い白紙をじっと見つめてみた。
すると白紙だった紙が色鮮やかに染まっていた。
諦められたと思っていた。でも夢と言うものは
諦められるものでは無かったのだ。
私は折れた鉛筆でその色をなぞった。
そして色鉛筆で夢を描き、消ゴムで
こすったって消えないように。
夢を描け――
届かない……
手を伸ばしても届かなかった。
喉を震わして伝えた言葉も君の心の奥に
届くことはなくて、君は音の無い宇宙の世界に
いるかのようで届きそうな思いに呼吸が揺れる
ことすらなかった。
もう少し早ければ届いたのだろうか。
“今”伝えなきゃいけないことなのに
意味ない事を考えて君の事を本気で
思っている気になっていた。
そして、届かない思いが私の中で消えていくように君は屋上のフェンスの外側で宇宙の重力に身を委ねるように消えてしまった――
木漏れ日
木々の隙間から降り注ぐ暖かい温もりと眩い光。
小さな木漏れ日に初夏の兆しを感じた。
色濃い春は、忙しい毎日の中で淡々と過ぎ去る。
木漏れ日の下で、少し汗ばんだ腕をかく。
ふと視線をやると虫に刺され腫れている。
赤い木の実のように晴れた虫刺されに夏の訪れを
実感しながら降り注ぐ太陽の温もりに身を委ねた
葉と葉の間で光る光。
その先をじっと見つめても何があるか見えない。
もしあの先に幸せの源があるのなら、私はこぼれと落ちる幸せの光をこの手で受け止めよう。
木漏れ日