セーター
糸と糸で紡がれた服
その服は何度も糸が絡み合って
できた凍てついた体を暖めうるもの
人もまた等しく
人はまたちがう
温めることも凍えさせることも
できてしまうから
それでもセーターのように
雪降る冬の中、凍てついた心を暖める人に
私はなりたい
飛べない翼
朽ち果てた翼を見つめる
何度も転んだ記憶を引き戻す土の香り
抜け落ちたハネに染み付いた血の匂い
とても醜い
とても誇らしい
見るも無惨なその翼は、もう飛ぶことを知らない
ただ過去に得た栄光の傷を誇らしげに朽ちてゆく
とても醜い
とても虚しい
飛べもしないのに悔いの無い翼に腹が立つ
「こんな翼にはなりたくない」
朽ちた翼を誇らしげに、私はそう思った――
鏡の中の自分
自分でも危なっかしいよ。
相手を理解したい。
相手の理解者でいたい。
その気持ちはきっと誰にも負けない。
友達がリスカしてしまったと
苦しんでいたとき。私はリスカしてしまう
苦しみを理解するために、一瞬の躊躇いも
なくリスカをした。
親にバレたくない。
執着してやめられない。
そんな気持ち、理解できた。
それで、相手は満たされた。
でも一番満たされたのは私。
私は皆の鏡人形。
あなたと一緒。私は貴方の理解者だよ。
いじめられた?なら、私もいじめて貰うよ。
みんなに嫌われたって、なんともないよ。
死にたい?なら、私も死ぬよ。
死にたい気持ちも死ぬ未来も全部一緒。
相手に合わせないと。
そんなこと、思わなくていいよ。私が全部全部
合わせるから。そうすると私も満たされる。
だって、一番嫌われない方法だもの。
鏡の中の自分は、貴方たちのモノよ――
懐かしく思うこと
家から見えるあの小学校
電車のってバスのって通う学校とは全然違う
平日は7時起きで
ランドセル背負い
班の皆で登校する
数学じゃなく算数
宗教じゃなく道徳
美術じゃなく図工
全てがすべて変わってしまった
紅茶の香り
仄かに苦そうで、熱くて火傷しそうで、
上品なティーカップに入った紅茶は
舌にも身分にも合わない気がしてた。
ふぅっと湯気を飛ばして
新鮮な味をこの人生に刻んだ
苦そうと思ってた。本当に少し苦かった。
火傷しそうと思ってた。本当に火傷した。
想像通り私には合わない味。
作りたてのレモネードの方が美味しい。
それでも、その新鮮さをいいと感じた。
紅茶の香り。それは私に新しさをくれた。
遠い昔のそんなつまらない話を思い出す
熱い紅茶の入った上品なティーカップに
2粒の砂糖が溶けてゆくのを見つめながら――