ふふっ
私は明日の16という数字に赤ペンで丸をつける
プルルルル、とポケットに入れていたスマホが鳴る
もしもしー?
明日の予定なんだけどーと機械を通した彼の声がする
しばらく話して通話を切る
美容院の確認、ネイルの確認、服の確認、メイクの確認
明日彼を喜ばせるためにできる限りの努力をする
よし!あとは明日の自分頑張れ!
翌朝目覚ましよりも早く起き、準備を始める
うん!可愛くなったんじゃない?
時間を確認し美容院に向かう
終わった後は彼と合流するだけなのだが
緊張し30分も早く着いてしまった
彼を待つ時間はとても長く長くどきどきした
しばらくすると彼の姿が目に入る
いつもよりも大人びた格好にまたどきどきしてしまう
水族館に行き、デパートに行き、
手を繋ぎ、ハグをして
充実したデートをし終えたらホテルに泊まる
夜景を楽しみつつ晩御飯を終えた
あとは部屋に向かーーーー
え、
景色が1番キラキラしているテラスで
彼が私のの目の前で跪き、彼の手の中には小さな箱と
中心には小さく光る指輪がある
僕とーーーーー
私は涙を止めることができないまま彼の言葉を頷き聞く
返事はもちろん
「こんな私ですがお願いします」
家に帰って落ち着いてからカレンダーの17という数字にしっかりとマークした
これから一生忘れることのないように
『カレンダー』
「俺さ、もう海から生まれたんじゃねえかなって思うんだよね。」
「お前何言ってんのさ。お前にはちゃーんと母さんと父さんがいるだろって。」
「だぁぁー!そうじゃねえんだよ!海が好きなの!!」
そうやってカラカラ笑っていた君はもうこの世にいない。あの世で元気にしてるだろうか。いや、心配するまでもないか。海に帰れてきっとあいつは幸せだろう。
今日であいつがいなくなってから3年の時が経つ。
案外時が経つのは早いもので、馬鹿みたいに騒いでたあの日々が昨日のように思い出せる。
俺は久しぶりに友がいなくなった場所に来た。
海で遊んでいて溺れた少年を助けるために飛び込んだことが死因だそうだ。
今日の海は嫌と言うほど穏やかで、あの日のことなど無かったかのように太陽の光をきらきらと反射させている。
「ばっかやろーーー!!!なにやってんだよ!!俺は!もっとお前と遊びたかったわ!!あほーー!!」
今更何を言ったってあいつには届かない。
わかってるけど、わかってるけど言わずにはいられなかった。馬鹿だよ、あいつは。自分の命捨ててまで人のこと助けるんだから。俺にはできねーよ。
『馬鹿はどっちだよ、俺の分まで楽しめって。』
「え?」
隣を見ても誰もいない。でも確かにあいつがいた。
ふと爽やかな風が吹き、髪を乱し、頬に流れた一筋の跡を冷やしていった。
まるであいつが俺を慰める時みたいに。
『海へ』
僕がこうして生きるのも
誰も味方をしてくれないのも
親からネグレクトを受けてたのも
同級生からいじめられてたのも
先生が相談にのってくれなくなったのも
全部全部最初から決まってたことなんだ
僕は幸せにはなれない
『最初から決まってた』
もしもタイムマシンがあったら
旦那の病気の症状が出始めた日々に戻りたい
ちょっとしたことは気にしないんじゃなくて
病院に検査に行ってもらいたい
もしそれが叶うのならば…
旦那は、私の隣で笑う旦那は、
写真ではなく本人だったかもしれない
『もしもタイムマシンがあったら』
私の当たり前が必ずしもあの子の当たり前であるとは限らない。
私がどう思って、どう感じて、どう行動するのか。
あの子が全く同じことをすることはない。
当たり前を強要せず互いに知り合うことが大切だ。
『私の当たり前』