「俺さ、もう海から生まれたんじゃねえかなって思うんだよね。」
「お前何言ってんのさ。お前にはちゃーんと母さんと父さんがいるだろって。」
「だぁぁー!そうじゃねえんだよ!海が好きなの!!」
そうやってカラカラ笑っていた君はもうこの世にいない。あの世で元気にしてるだろうか。いや、心配するまでもないか。海に帰れてきっとあいつは幸せだろう。
今日であいつがいなくなってから3年の時が経つ。
案外時が経つのは早いもので、馬鹿みたいに騒いでたあの日々が昨日のように思い出せる。
俺は久しぶりに友がいなくなった場所に来た。
海で遊んでいて溺れた少年を助けるために飛び込んだことが死因だそうだ。
今日の海は嫌と言うほど穏やかで、あの日のことなど無かったかのように太陽の光をきらきらと反射させている。
「ばっかやろーーー!!!なにやってんだよ!!俺は!もっとお前と遊びたかったわ!!あほーー!!」
今更何を言ったってあいつには届かない。
わかってるけど、わかってるけど言わずにはいられなかった。馬鹿だよ、あいつは。自分の命捨ててまで人のこと助けるんだから。俺にはできねーよ。
『馬鹿はどっちだよ、俺の分まで楽しめって。』
「え?」
隣を見ても誰もいない。でも確かにあいつがいた。
ふと爽やかな風が吹き、髪を乱し、頬に流れた一筋の跡を冷やしていった。
まるであいつが俺を慰める時みたいに。
『海へ』
8/24/2024, 3:06:56 AM