蒼月 有紀

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8/27/2024, 3:47:33 PM

雨に佇む

ある雨の夜のことだった。
私は気づけばずぶ濡れで、でも、周りは誰も気にもとめない。
私の存在なんて、認識していないかのように。
雨なんて、降らなければいいのに。
なんだかひどくさみしいような感じだ。

ふと、服が張り付いてきているのを感じた。
私の淡い色のワンピースは濡れて、色が濃くなっている。
傘をさしているはずなのに、それも意味をなさないくらいに降る雨。
いっそ、濡れて帰ってしまおうか。
なんて、考えながら家に向かう。
帰ったら、お風呂、沸いてるといいなぁ…。

そんなことを思っていると、スマホが鳴った。
「雨、すごいけど、大丈夫なの?雨宿りしてから帰ってきな。」
母からだった。

雨宿り、かぁ…。
天気予報を調べても、雨は止む様子がない。
いいや。帰ろう。
帰ってゆっくりお風呂に浸かればいい。

割り切ってしまえば、雨というのも楽しくて、たまには濡れて帰るのも悪くはないような気がした。
雨粒の傘に当たる音を楽しんで歩く。

次の雨の日はどんな傘と歩こうか。

8/20/2024, 3:14:51 PM

さよならを言う前に

8/17/2024, 3:04:34 PM

Childhood

いつまでも捨てられないもの、なんて、誰にでも一つくらいあるんじゃないの?
それはいけないことなの?

それ、持って眠るつもりなの?!
ママはいつも私にそう言う。
別に私の自由だと思うのに。
ママが使うわけじゃないんだから、いつまで持っててもいいでしょ!
なんていうけれど、私もそれが普通じゃないことくらいわかっている。

私はライナスみたいに、彼の安心毛布みたいな私のタオルを持って眠る。

新生児だった頃。
未熟児として生まれた私におばあちゃんが作ってくれたものだ。
もう、18年の付き合いになる。
そろそろ布もほつれたりしてきて、捨てなさい、なんて言われるけれど大事なものだ。
私が生まれたことを喜んで、未熟な私を助けてくれた人がいた証であり、私が無事に生きている証だと思うから。

これを捨てることはまだないだろうな。
だって、そんなことを考えられるほど大人になれていないのだから。
私はいつまでも子どもで居たいのだから。
なんて。

そんな事を言っているから、なにも捨てられないのかもしれない。
夢も、希望も、空想じみた話を信じる心も。
童話の中の女の子になりたくて。
プリンセスがいるような世界に憧れて。
妖精も魔法使いもいるあの世界を諦められずにいる。

はぁ…。
ホグワーツに行きたいし、夢の国の住人になりたい。
ワンダーランドにだっていきたいし、オズの国にだって。

そんな絵空事を追いかけて私は、いわゆるDヲタになった。
でも足りないから、今年こそはハロウィーンだけでもプリンセスになる。
それ以外は、少女みたいなガーリーな服やらロリィタやらを着て、おとぎ話の中の女の子!になってやるんだから!

8/15/2024, 4:01:50 PM

夜の海

手持ち花火を、夜の海辺で。

持ち寄った手持ち花火の封を切り、ライターで火を灯す。
いつもの四人で。
私の大切な人たちが、お互いを大事だと感じていることを幸せに想いながら。

それでも、台風が近づく海辺では、火はつけたそばから消えていった。

マジックアワーが終わる頃。
近くのコンビニにふたり。
暗くなった公園を、回り道して進んだ。
着火ライターを買いに。
最後の一つだった。

帰り道は少し足早に、近道をして。
こっちから行けばよかった、なんて、笑いながら。
向かうときには不気味に思えた公園の暗さも、花火をきれいに見せてくれる材料に思えた。

海辺に戻れば風は、少し弱まって。
それでも湿気を帯びた空気の中では灯らない光。

なかなか点かない花火に火を近づける。

その瞬間、手の先で光が弾けた。
思わず「ついた」と揃えて叫んでいた。
明るく輝く花火の鋭い音が響いた。
ゆっくり眺めるまもなく消えていく輝きに見惚れていた。