蒼月 有紀

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夜の海

手持ち花火を、夜の海辺で。

持ち寄った手持ち花火の封を切り、ライターで火を灯す。
いつもの四人で。
私の大切な人たちが、お互いを大事だと感じていることを幸せに想いながら。

それでも、台風が近づく海辺では、火はつけたそばから消えていった。

マジックアワーが終わる頃。
近くのコンビニにふたり。
暗くなった公園を、回り道して進んだ。
着火ライターを買いに。
最後の一つだった。

帰り道は少し足早に、近道をして。
こっちから行けばよかった、なんて、笑いながら。
向かうときには不気味に思えた公園の暗さも、花火をきれいに見せてくれる材料に思えた。

海辺に戻れば風は、少し弱まって。
それでも湿気を帯びた空気の中では灯らない光。

なかなか点かない花火に火を近づける。

その瞬間、手の先で光が弾けた。
思わず「ついた」と揃えて叫んでいた。
明るく輝く花火の鋭い音が響いた。
ゆっくり眺めるまもなく消えていく輝きに見惚れていた。

8/15/2024, 4:01:50 PM