はちゃめちゃに元気な君。
毎回君に手を引っ張られて、いろんな所に遊びに行った。
夕暮れが来るまでずっと遊んだ。
君と居ると、僕まで元気になれたような気がした。
ある日の事だった。
さんざんいろんな所に行って、遊び疲れた夕暮れの時の事だった。
「あたし、もうここに居られなくなるんだって。」
いつもよりも低いトーンで僕に告げた。
あまりにもびっくりしすぎて、声も出なかった。
いろんな思い出が頭を巡った。
はじめて君と会ったこと。
学校をサボって遊びに行ったこと。
授業中に君と書いた小さな手紙のこと。
たくさんあった。
「嫌だなぁ」
自分勝手な言葉だ。でも、伝えておきたかった。
「えへへ…嬉しいよ」
君は夕暮れに照らされていた。
黄昏…とでも言うのだろうか。
思わず君に見惚れてしまった。
憂いを帯びた表情に飲み込まれそうになった。
「いつまでもこのままがいいのに」
「…だといいけど」
他愛のない会話は夕暮れに溶けていった。
お題:たそがれ
いつも通りの朝。
気持ち程度に食卓に並ぶ小さなサンドウィッチを口に咥え、家を出ようとする。
その時、つけっぱなしのテレビからニュースが聞こえてくる。
『ーー巨大隕石により、明日で地球が滅亡することが判明しました。』
「は?」
食べていたサンドウィッチが床に落ちる。
…今日はエイプリルフールではないはずだ。
その時、扉の外から声が聞こえた。
「おーい!学校遅れるぞ〜!」
友達の声だった。
「あ、あぁ。今行く」
混乱しながらも落としてしまったサンドウィッチを皿の上に置き、冷蔵庫に入れた。
「なー昨日さ、あいつ彼女できたって言ってたろ?でも、彼女が蛙化起こして彼女から別れたんだってよ!」
「あ、へぇそう」
ニュースのことが頭から離れなかった。
「お前、今日上の空すぎんだろ。」
「うん…ごめん」
「…もしかして今日のニュースのことか?」
ちょうど考えていたことを当てられて図星だとびっくりした。
「なんで分かったんだよ」
「そりゃあ俺も地球滅亡だなんて言われたら覚えるだろ。てか1週間前くらいから報道してたぜ?」
まぁ、地球滅亡だなんてネタがあるなら1週間前…いや、1ヶ月前から報道するのもありえる。
「お前、怖いのかよ」
「…別に。」
心にもないことを言った。
本当はとても怖くて…寂しい。
明日からもう学校に行けなくなるとか。
美味しいご飯も食べられなくなったりするし。
くだらない会話でお前と笑えることもなくなる。
「あっそ」
ぐるぐると脳裏で回る考えが感情を揺さぶろうとしている。
「お前に会えなくなるのは、嫌だな」
口から零れ出た本音。
俺自身、びっくりした。
特別な関係な訳でもないただの男友達なのに。
「俺も嫌に決まってんだろ」
そいつはカラリと笑って俺の前を歩き出した。
「ほら、早く行こうぜ。マジで遅刻するぞ?」
「んじゃぁ…行くか!」
急に元気になった俺を見てあいつは「競争でもするか?」と挑発的に笑った。
「その話、ノッた!」
「おっしゃ!」
勢いよく走り出した俺達はまるでない明日に駆け出しているようだった。
きっと明日も、こんな毎日があればいいと願って。
お題:きっと明日も
「おぇぇっ…う…うげぇ…」
エンドレスな吐き気に襲われる。
ものすごく気持ち悪い。
ODをした。
はじめての事だった。
毎日のストレスに耐え難くなった私は、ネットで見かけた『楽になれる方法』に手を伸ばした。
リスクが長々と書かれてあったが、私にこんなものを読む余裕はない。
すぐにドラッグストアへ向かい、市販薬を3箱買った。
これで死んでも、パソコンに向かわなくて良くなるならもうそれでよかった。
「へぇ、最初は15錠くらいがいいんだ」
瓶から乱雑に薬を取り出し、そこら辺にあった水で押し込む。
「これでいいのかな」
しばらくすると、頭がぼわぼわしてきた。
それから吐き気を催し…今に至る。
ゴミ袋だらけの異臭に包まれた私の部屋は人が住んでいるとは思えなかった。
私の部屋には常に静寂が澄んでいた。
「慣れてきたなぁ」
吐き気も平気になり、浮遊感を感じながら布団にくるまる。
これでいいのか、なんて私も分からない。
ただ、1つ分かるのは。
この部屋から静寂が消えることはないということだ。
お題:静寂に包まれた部屋
「別れよう」
彼氏から突然告げられた、最悪の言葉。
「なん…で…」
その辺のカップルよりかは、充実した生活を送っていたと思う。
これじゃ、満足できなかったの?
私に何か非があったの?
もしかして好きな人ができたの?
たくさんの質問が脳裏によぎる。
だけど。
「わかっ…た…。」
それでも口から出た言葉は『肯定』だった。
「…ごめん。」
私が愛したあなたは気まずそうに俯く。
せめて、別れ際くらいは。
「な、ど、どうしたの!?」
あはは、すごく動揺してる。
「…最後くらい、私からしてみようと思っただけ。」
彼の唇に私を重ねた。
「…っ」
彼は頬を真っ赤にして唇に手を当てる
「ふふっ、惚れ直した、なんて言ってももう付き合ってあげないんだから」
いたずらっぽい笑みで微笑んで、私はその場から去った。
私は最後まで彼の『彼女』で居れたよ。
お題:別れ際に