お久しぶりです。本日は、お題を無視しての投稿になります。申し訳ありません。
とある書きかけのシナリオの冒頭を。必ず書ききるという意志の元、こちらにあげさせていただきます。
君の答えは、言葉を選ばないのなら、どうでも良いのだ。
私は人に何かを問えるほど、高い椅子に座ってはいない。どころか、自分だって答えあぐねているのだ。どうして正解を知ったような顔で、微笑めようというのか。
だから、回答なんてしなくていい。
ただ、ほんの少しだけ。想いを巡らせて欲しかった。
君が見ているつもりで見ていない何か。
君が誰にも見せてもらえなかった何か。
疲れるだろう。面倒くさいだろう。
そうして深く、傷付くかもしれない。
私は君を、どうしようもないほどに傷付けるかもしれない。
それでも、透いた濁った、紛れもない君の頭で、想像して欲しかった。充分にあり得る『かもしれない』噺を、一つ、君に届けたかった。
見下げればきっと容易く、想い描ける筈だ。
それは君が、気付きたくなかったと嘯く君が、端から全て、知っていたから。
責めるわけでは決してない。そんなことはできやしない。
だがどうか、どうか君が少しばかり、弱く在ってくれと。私は願って止まないのだ。
……斯くあれと、焦がれども。
けたたましいアラームは、鳴らなかった。ことにした。朝を告げられても困るのだ。こちとら絶賛、布団に求愛中である。
だが、欠勤がつくのはもっと困る。夢心地でもお腹は満たされないのだ。苛つき故の緩慢さで、今日ものそのそ起き出した。
義務と言うより必要性。現代社会を生きる人達に必要なもの。……というか、現代社会を生きる私に必要なもの。いいじゃない、『私だけ〜』なんて思うより、主語大きくして周りも勝手に真っ黒にして、悦に入ればまだ頑張れるのだから。
全く、性格が悪い。おまけに夢も希望もない。……まあ、それでも生きていけるんです。悲しいことに。
朝から哲学もどき、語ってみても時計は進む。あれよあれよと言う間に、ああ電車の時間。すっかりくたびれたオフィスカジュアルに袖を通して、……今日の帰りにファストファッションブランドを漁ると決めて、取り敢えず、底の擦れたパンプスを鳴らした。
焦っていても遅刻はしない。何回この道を通ったと思っているのだ。変わり映えのない日常は、つまらないけれど平穏だ。
……いや、訂正。いらない方向に変わることもある。月末からバスの運賃が上がるらしい。オーマイゴッド、ワン・モア・コイン。
世の中は、つまらないうえに世知辛い。
「……あ、新作」
家から職場までの道のりに、少し大きなショッピングモールがある。外道沿いに作られた客寄せパンダな映画館の、でかでかと張り出されたポスターには、著名な監督のアニメ映画があった。
中身としては、目新しさはあるけれど、ようは少年少女の、数日間の不思議な体験である。
昔は、好きだった。よく覚えているものだ。『どうして好きだったのか』。ひょっとして、に期待ができた、とてもとても純粋な感情たち。なくなったわけではないけれど、それ程大きなエネルギーを生み出さなくなった感情たち。
よく、覚えているくせに。
今朝は憂鬱なため息一つ、生み出すことしかしなかった。
……時折、思うのだ。目に付く、ドアというドアを全て、開け放ってやろうか、と。
そうしたら、その内の一つくらいは、ファンタジーな何かに繋がっているのではないか。
そうしたら、決して行けない世界に焦がれることもなく、こんなに惨めな思いをしなくても済むのではないか。
――それは探究心でなくて、逃避である。
誰に言われたのか、自分で言い聞かせたのか。いずれにしても、そうニヒルに嗤った瞬間から、感動が冷めるまで時間が、圧倒的に短くなった。
そうして冷めて、哀しくなった。
気付いてしまった。簡単なのだ。泣くより笑うより、ただ口角を吊り上げるほうが。よっぽど疲れず、何時でもできる。ほら、これが大人になるってことなのよ。そんな風に言う時だって、やっぱり嫌味な顔で、笑ってる。
ああ。
「…………うっっせぇぇ!!!」
逃避? いいだろ別に。
そうです鬱々鬱々皆暗いから!
たまにはそんなの全部忘れて息抜きしたいんですぅ!
好きだよ。今でも大好きだよ。ぐちぐちこうやって考えるけど、ああ畜生、泣いちまったって、なんか負けた気になりながら、八つ当たりするんだよ。
すぐ『覚める』かもしれないけど。
虚しくなるかもしれないけど。
それでも、こんな自分を、どこかへ連れて行ってくれるから。コンマ一瞬、だけど確かに、ここではない何処かへ、私が行けるから。
……やめた、やめた。服なんてまた今度。頼まれても今日は絶対定時で上がって、ここに来て。
終わったら、ビールとポテチを買って、見知った家に帰ることにしよう。冷めるまでの、知らない感情をひきずって、帰ることに、しよう。
【ここではないどこか】
6月21日(日)
殴り書かれたのは日付だけ。書いた当人からしたら、充分だった。
雨の日だった。纏わりつく湿り気と停滞した空気があった。純然たる、6月だった。……人生が大きく変わった日? どうだか、それは終わってみないと分からない。
そんな自覚は、今のところは微塵もない。
好意はあったかもしれない。かもしれない、と思う程度にはどうでもいい人だった。
小雨の中に傘をささずに出ていく人は、珍しくもなくて。それでも彼女が傘をさしていなかったのは、明確な理由があるのだろうか。
隣の人は、嫌に彩度の高い、真紅の傘を掲げていた。それすらも、梅雨の空にはくすんで見えた。
もう顔も思い出せない。すれ違っても、きっと分からない。ごくありふれた、別れの日。
……どうして、そんな日を記録したのだろう。
6月21日(日)
ただの記号の羅列は、大切にしまい込んだ他のどんな写真より、記憶の欠片を鮮明に写した。
【君と最後に会った日】
再開を約束する言葉は気分じゃない。
成長を期待するには短すぎるだろう?
……。
そんな半端な時間で、お前は一体何を成すって?
【一年後】
今日がずっと続けばいい。
早く明日になったらいい。
一歩も家から出たくない。
世界中を見てまわりたい。
ずっと一人で佇んでたい。
友人の元へ駆け出したい。
沢山の物を焼き付けたい。
目をふさいでしまいたい。
なにも聞き逃したくない。
音の一つも聞きたくない。
支離滅裂、支離滅裂。天邪鬼でさえない。
傲慢で、強欲で、陽気で、陰気で、もう、めちゃくちゃ。何を言っているか、思っているか、それすらも分からなくなるくらいにぐちゃぐちゃで。でもね。
私なんです。全部全部私なんです。
どうか、どうか、一つたりとも違わずに。認めてくれはしませんか。
【神様へ】
麦粉の垢は引き継げませんでした。続けたり続けなかったりしていきます。