6月21日(日)
殴り書かれたのは日付だけ。書いた当人からしたら、充分だった。
雨の日だった。纏わりつく湿り気と停滞した空気があった。純然たる、6月だった。……人生が大きく変わった日? どうだか、それは終わってみないと分からない。
そんな自覚は、今のところは微塵もない。
好意はあったかもしれない。かもしれない、と思う程度にはどうでもいい人だった。
小雨の中に傘をささずに出ていく人は、珍しくもなくて。それでも彼女が傘をさしていなかったのは、明確な理由があるのだろうか。
隣の人は、嫌に彩度の高い、真紅の傘を掲げていた。それすらも、梅雨の空にはくすんで見えた。
もう顔も思い出せない。すれ違っても、きっと分からない。ごくありふれた、別れの日。
……どうして、そんな日を記録したのだろう。
6月21日(日)
ただの記号の羅列は、大切にしまい込んだ他のどんな写真より、記憶の欠片を鮮明に写した。
【君と最後に会った日】
6/26/2023, 11:13:40 AM