この世に、何のために生まれてきたのだろう。きっと、何か決めて出できたんだと思う。そんなこと考えないで、流れに身を任せて、淡々と生きていくこともできる。
でも、ふと立ち止まって、色々考えたりする。何のために生きているのか。ああ、生きている、こうやって生きていきたかったんだと実感したいと思う。
まだ、見つけられていない感じがしている。そうやって、過ぎていってしまうのだろうか。ただ何か動いてみると、少しは変わる気がする。
もしそれが、これだ!と思うものじゃなくても、そんなことを積み重ねていくことが、大切なんだろうか。
「神様へ」
窓から入る日差しが、今日は明るいと思った。外に出てみると、雲一つない青空が広がっている。こういう日を快晴というのだろう。
最近は、すぐ暑くなって、日差しが心地よいなんて日が少なくなった。もしかしたら、今日は一年でも貴重な日かもしれない。
こんな日を満喫しないなんて、もったいない。さあ、何をしよう。歩きながら考える。よくすれ違う自転車が、いつもより軽快に通り過ぎていく。
みんな快適に見える。すたすた歩きながら、考える。何か飲み物でも買って、ぼんやりしようか。ただただ、この陽気を楽しむことしか思い浮かばなくて、それもいいかと思う。
「快晴」
その犬は、いつも遠くの空を見つめていた。空に少しでも届くように、ジャンプをしている。ぴょんと飛んでみると、少しだけ空が近くなる気がした。
目の前に、おもちゃや、おやつもあるのだ。でも、いつも遠くばかりを見つめていた。ある日、少し高台に行った。坂道をトコトコと登る。とてもわくわくした。行き着いた先は、いつもよりだいぶ高い場所だった。
ここからなら、あの空に近づけるかもと思った。えいっと、ジャンプしてみた。少しだけ、近づいた気がしたけれど、まだまだ遠かった。もっと高い場所に行こうと思った。そうやって、ずっと遠い目をし続けている。
「遠くの空へ」
バスに揺られていく。住宅が見える場所から、いつのまにか山の中に入っている。ぐるぐると旋回しながら、どんどん登っていく。
気分が悪くならないように、バスが揺れる方向にぐいっと体を傾ける。雨上がりの道を、タイヤが、ジャリジャリというような音をたてる。
右、左と揺れていると、バス停があった。こんな山奥で降りてどこに行くというのだろう。バスは、そこに停まらず通り過ぎた。するとぱっと視界が開けた。さっきまで見た街が下の方にぼんやりと見える。
遠くの山に、ふわりと、もやがかかっていた。ゆるゆると動いている。下の街から、言葉にならないような数々の思いたちが集まって、もわっと湧き出ているようだった。
バスを乗る前から抱えていた思いも、ふぅーっと一本の筋になって、その谷間に吸い込まれていった。
「言葉にできない」
いつのまにか、明るい日差しが降り注ぎ、花が咲いている。桜は薄ピンクのもやを作り、黄色い花が下を埋め尽くす。
枯葉に覆われた地面は、黄緑色の草がそよいでいて、枝だけの木に新芽が芽吹く。辺りは瞬く間に、華やいで色に包まれる。
それをぼんやり見ていると、光の合間に、何かふわふわした小さなものが、ふんわりと降り注いでいる。幸せという世界があるとしたら、こんな景色をいうのかもしれない。
「春爛漫」