何となく目で追ってしまう。君がいるところを見てしまう。でも、目が合ってしまうと大変だ。すーっと吸い込まれそうな気がするから。
だから、目を合わせてはいけない。口にすることがいつも本当だとは限らない。つい、嘘ばっかり言ってしまう。気持ちを気付かれるのがこわいから。
君が写真を撮るという。レンズの奥の目を見る。レンズ越しなら、大丈夫だ。じっと見る。君が少し慌てた感じでいる。
人の本当の気持ちなんて、わからない。君の目にはどう映っているのだろう。
「君の目を見つめると」
家にいるのが、いたたまれなくなって、思わず外に飛び出す。ぱっと、夜の匂いに包まれる。夜には独特の匂いがある。人があんまり出歩かなくなったら、入れ替わるように植物たちが醸し出すような匂いがある気がする。
少し歩くと公園がある。灯りが遊具や置き物に陰影を作り、土の地面に無数の足跡があった。ザクザクと土を踏んで、手前のベンチに腰掛ける。
奥にある桜の木が満開で、薄ピンク色にぼんやり光っている。下もうっすらとピンク色だ。上を見ると星がチラチラしていた。
イライラしてもどうしようもないことは分かっている。星は、ずっとただただ揺れている。そのままぼんやり見る。夜は感傷的になっていけない。でも、少しだけ心が軽くなってきた。
「星空の下で」
四月、新しい生活が始まる人もたくさんいるのだろう。慣れないことを始める時は、何もかもが不安だ。分からないことがたくさんで、自分で調べたり、人に聞いたりする。
こんな感じでいいのだろうか。よく分からない。手探りで進めていく。見当違いになったりしてないだろうか。何だか、ずっとふわふわして、地面に足がついてないような感じだ。
なんとかやってみて、それでいいと分かった時は、小さな山を一つ超えたみたいで、少し安心する。何でもそんなことを少しずつ積み重ねて、慣れていくのだなと思う。
「それでいい」
色々と選択肢がある中から、一つだけ選ぶのは結構難しい。たとえば何か買う時に、気になるものがたくさんあって、デザイン違いや、色違いとか、それぞれに良かったりすると、大いに悩む。
なんとか二択ぐらいに絞り込んで、また悩む。店員さんが、アドバイスをくれたりするのだけど、なるほどと思いながらも、なかなか決められない。それを手にした時、どう使うかなんて思いをはせながら、頭の中がぐるぐるしている。
そして、なんとか選んだものを、ワクワクしながら連れて帰る。開封しながら、ふと選ばなかったほうのものを思う。あれはあれで良かったなと考える。いっそのこと、両方買えば良かった? なんて思うけれど、それをしてしまうとなんか違う気がする。
やっぱり、選ぶという行為そのものが楽しかったのだ。選ばなかったほうへの思いをはせながら、使っていくのがまたいいのだろう。
「一つだけ」
こんなものをとっておくなんて、と我ながらびっくりしてしまうことがある。一緒に行ったお店のオシャレなコースターとか、もう使わないけど、似合うと言われたヘアピンとか、お揃いで買ったペンとか。
なんだか、ガラクタが増えていくだけじゃないと思う。節目の日なんかにもらったものも、もちろんうれしいけれど、何気ない日々の思い出がつまったものって、なかなか手放せない。
バッグの口が開くからと、その時、持っていたクリップを君にあげたら、ずっと使っている。「まだ使ってるの?」と言うと、「気に入ってるから」なんて、当たり前のように言われたら、思わずニヤニヤしてしまう。
何気なくあげたものを、大切にされているのを知った時、なんでこんなにもうれしいのだろう。
「大切なもの」