家に遊びに行った時、「この部屋さ、何かあると思うんだ」と、声をひそめて言ってくる。「時々、電気がふっと消えたり、ついたりするし、夜中にカタッて音がしたりする」。
「怖くない?」と聞いてくるので、「あんまりそういうの感じないから大丈夫かも」と言うと、「まあ、気にしないから、住んでるんだけどさ」と、少し大きく目を見開いて平気そうにしてみせる。
そんなことを話していたら、急にパチンと明かりが消えた。「ひゃぁー」と変な悲鳴が聞こえる。「ね、ほらー、そうだ」とまた目を見開いてこちらを見てくる。
きっと、蛍光灯が切れたのだろう。でも、しきりに「ほらね、ね?」と何度も言っている。まあ、そんなところが面白くていいんだけど。
「怖がり」
夜、森の中をどんどんと奥に歩いていく。黒い木々の間から見える空は、無数の星がきらめいている。普段は、ちっとも気づいてなかったけれど、こんなにもたくさんの星があったのだ。
どんどん小道を突き進んでいく。枯葉や木の香りに包まれて、どのくらい歩いただろうか。突然、ぱぁーっと視界がひらけた。
空が大きくはっきりと見える。たくさんの星がきらきらとまたたいて、少しくらくらした。それでも見ていると、星がふるふる揺れて、ぶわっと溢れ出した。そして、光の筋を残しながら一つ、また一つと落ちてきた。
その時初めて、目から、ぽろぽろ、ぽろぽろと涙がこぼれていることに気づいた。
「星が溢れる」
何か分からない苛立ちと、自分のことが嫌すぎると、自分で自分を傷つけようとしていた。いつも諦めのような、でも、何かに期待するかのような、時々哀しみをたたえたような不思議な瞳をしていた。
その瞳の奥に、傷つきやすい本当の自分を押し込んでいた。何が変えたのだろう。年を重ねるにつれ、自然と心がほぐれていったのだろうか。人と関わる職業のせいだろうか。久しぶりに見た君の瞳は、優しくて、とても安らかだった。
「安らかな瞳」
一人でなんでもやって、一人で生きていく。一人でも全く大丈夫なんだけど、ふと、何だかねと思う時がある。
誰かがいてくれたらいいのだけど、その一瞬は満たされても、また違う煩わしさがやってきたりする。
でも、なんだか変な話ではないのだけど、よく分からない大きな何か、創造主のようなものが本当はずっと見守ってくれていると思うと、ちょっと元気がでてくる。
「ずっと隣で」
好きになったら、もっと君のことを知りたいと思う。でもそのうちに、どんなに近くにいたって、ずーっと一緒にいたって、君の全てを知ることはできないってことに気づく。
よく考えたら、そのよく分からない部分って私にもある。自分でもよく分からない。そんな部分を、案外君のほうが知っていたりする。
誰かを好きになると、どんどん浮き彫りになる知らなかった部分。それが、時々辛かったりもするけれど、楽しくもある。結局、よく分からない部分があるから、魅力的なんだと思う。
「もっと知りたい」