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1/22/2026, 8:56:38 AM

 夕方の空がきれいだった。みかんのようなオレンジ色から、夜を迎える薄い青へ美しいグラデーションを作っていた。

 下の方にある黒い山々がアクセントになっている。そして、その薄い青のところに、三日月が浮かんでいた。これ以上ないほど細く繊細な三日月。思わず立ち止まって、眺めた。

 こんな日の夜は、きっと特別な夜に違いない。


「特別な夜」

1/21/2026, 5:30:32 AM

 水際の海の底は、見ることができる。波にさらわれる砂と、たまに、ちらちら貝が揺れている。深い深い海の底はなかなか見ることがてきない。

 船に乗って、海を眺めた。青のような緑のような色から、その奥行きの深さが感じられる。「あー、いっそのこと深海の魚になりたい」。思わずつぶやく。誰にも惑わされず、暗闇の中、一匹狼で生きていきたいなんて思う。

 「そこはそこで大変だと思う。深海の中の生き物って、強い気がする。光のない世界で生きるために色々変わってきたのかもしれないから」と、君が言う。

 そうか。どこも同じか。それにしても、君はいつも淡々としている。「感情がすごく動くことってある?」と聞くと「あるよ。でもそんな時は、それを海の底にポーンと捨てているから」。にっと笑う。やっぱり君はよくわからない。


「海の底」

1/20/2026, 6:23:15 AM

 ここはとても懐かしい場所だ。よく散歩にきた。大きな池の周りを歩きながら、水面をぼんやり眺めるのが好きだった。

 鳥たちが気持ちよさそうにすーいと泳いでいる。時々、魚がちゃぽんと音を立てて水しぶきをあげる。池と空がつながって、清々しい。

 池を周りながら、色々なことを考えた。自分の未来のこと、何をして生きていこう。真剣に考えながら、目は季節ごとにうつろう池の周りの木々や、草花を見ていた。

 悲しいときや、つらいとき、うれしいとき、何か感情が動いたときも、ここに来たら気がまぎれた。色々な人がいる。ジョギングする人、賑やかな学生たち、ベンチでくつろぐ人、カップル…。

 ああ、君と来たかったなと思う。一緒に散歩したかった。何を話すだろう。ちょっとつまんなそうな顔をしているかもしれない。今どうしているのだろう。

 
「君に会いたくて」


1/19/2026, 7:21:30 AM

 君と連絡が取れなくなった。家に行ってみると、部屋はいつも通りで、変わったようすはなかった。机の上を見てみると、厚めのノートのようなものがあった。

 しっかりした表紙に日記と書いてある。中を見るか少し躊躇したが、思い切って開いてみた。小さな几帳面な字で、丁寧に記入されている。淡々と毎日の行動だけが記されていた。

 何時に起きて、仕事、夕飯、就寝。ほぼ毎日同じようなことが続いている。パラパラとめくって、君と連絡が取れなくなったページを探した。

 ドキドキしながらめくると、そこには、今までとは違う大きな文字で〝やめた! 〆〟とだけ書いてあった。〆? よく見ると、そのページの下のほうに、小さく→と矢印が書いてある。

 次のページを見ると〝旅行中〟と書いてあった。あ、そうなの? 思わず声がでる。日記を閉じながら、少しほっとしていた。


「閉ざされた日記」

1/18/2026, 7:24:10 AM

 地面に落ちた枯葉がくるくると舞い上がるほど風が強い。耳元を過ぎる風がびゅーっと音をたてている。思わず、コートの首元をしっかりしめて、マフラーを上からかぶせる。

 後から色々思ってしまう。人との関わりに、思い悩むことがある。もっとこうすればとか、こう言えば良かったとか。そう、言い方かな。風のように自然に流れていくような感じがいいのだ。

 うまくいかなかったことも、もう過ぎてしまった。またの時に考えたらいいか。こんな小悩みは、この風のように吹き飛ばしてしまおう。

 今日の風は、木枯らし1号だったらしい。

「木枯らし」

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