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9/16/2025, 8:37:56 AM

 どうしようもなく、ずーんと気分が落ち込んだ時は、旅に出るのがよかった。いつもの癒やしスポットもいいけれど、日常の場所ではないところへ。
 本当は、動く気もしない。でも、じっと家にいても色々と考えてしまう。誰かと一緒にいる余裕もまだない。思い切って、旅に出てみる。
まだ頭の中は、そのことでいっぱいだけど、だんだん目の前のことに気をとられてくる。
 
 その旅では、見るものの印象が強く感じられる。ただでさえ感情が大きく動いていたのだから、心にずんずん入ってくる。美しいものは、いつもよりもっと美しく見える。気付けば、悲しみを全く忘れることはないけれど、少し後ろに追いやられている。それは、時が経って悲しみが癒えた後でも、大切な思い出として心に残った。

「センチメンタル・ジャーニー」

9/15/2025, 7:27:43 AM

 夜の雰囲気は、感傷的になる。二人で並んで歩く道は、ぼんやりと明るい。青暗い中、月の光が君の顔を照らし、青白い陰影を作る。その横顔はいつもより物憂げで、やさしく見える。私の顔も月の効果でよく見えたりしていないかな。

 伝えたいことがあるのに、なかなか言い出せない。こちらを見て笑う君の顔をずっと見ていた。二人はこのまま変わらないのだろうか。ふと、会話が途切れる。「月がまんまるだよ」と月に話をふった。「満月かな」。

 月は大きくて、ふるふると揺れているように見える。じっと見ていると、月はじんわりと温かい熱を帯びて、線香花火のようにぽとっと落ちてきそうな気がした。


君と見上げる月…🌙

9/14/2025, 9:40:54 AM

 空白を楽しむってなかなかいい。
空白ができそうだと、妙に焦ることがある。
もっと書かないと。会話をしないと。塗らないと…。それを、ちょっとやめてみる。 

 すると空白があらわれる。そこに色々なものが隠れている。見えないけれど、色々なものが交錯している。または、無かもしれない。何にもない空なもの。ただそこにある。

 そして、空白は余裕ともなる。張り詰めていたものが緩んで、ふっと息ができるようなそんな気がする。

「空白」

9/13/2025, 9:37:15 AM

 いつも慌ただしく、わっとやってきて、すごい熱量で物事を進めていく。周りの人も大きな風に巻き込まれて、ぐわんぐわんと揺れる。気がついたら、停滞していたものが、あっという間に進んでいる。終わるとまたさーっと撤収して、もとの静けさが戻ってくる。

 たまにやってくるその人は、痛みを伴うことがあるけれど、よいものを残してくれる。台風が海をかき混ぜて、自然界の流れを作るように。

「台風が過ぎ去って」

9/12/2025, 5:04:12 AM

 雲海が見えるというホテルに泊まった。朝、外を見ると、その日は見ることができなかった。
 
 ホテルの露天風呂に行ってみる。扉を開けると、誰もいない。目の前に、遠くの山々の緑が見えた。空気がキーンと冴えて清々しい。
 ひとり、湯船に浸かった。少しぬるめのお湯に心地よく包みこまれる。静かだ。露天風呂は、高い場所にあるので、空中に浮いているよう。空に手を伸ばしてみた。朝の光をうっすらと浴びた白い空の中にすーっと吸い込まれそうになる。雲海が出たときは、ここも雲の中になるのだろうか。
 
 ふいに、入り口の方から声がした。はっと、目が覚めたような気がした。

「ひとりきり」

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