夜の雰囲気は、感傷的になる。二人で並んで歩く道は、ぼんやりと明るい。青暗い中、月の光が君の顔を照らし、青白い陰影を作る。その横顔はいつもより物憂げで、やさしく見える。私の顔も月の効果でよく見えたりしていないかな。
伝えたいことがあるのに、なかなか言い出せない。こちらを見て笑う君の顔をずっと見ていた。二人はこのまま変わらないのだろうか。ふと、会話が途切れる。「月がまんまるだよ」と月に話をふった。「満月かな」。
月は大きくて、ふるふると揺れているように見える。じっと見ていると、月はじんわりと温かい熱を帯びて、線香花火のようにぽとっと落ちてきそうな気がした。
君と見上げる月…🌙
空白を楽しむってなかなかいい。
空白ができそうだと、妙に焦ることがある。
もっと書かないと。会話をしないと。塗らないと…。それを、ちょっとやめてみる。
すると空白があらわれる。そこに色々なものが隠れている。見えないけれど、色々なものが交錯している。または、無かもしれない。何にもない空なもの。ただそこにある。
そして、空白は余裕ともなる。張り詰めていたものが緩んで、ふっと息ができるようなそんな気がする。
「空白」
いつも慌ただしく、わっとやってきて、すごい熱量で物事を進めていく。周りの人も大きな風に巻き込まれて、ぐわんぐわんと揺れる。気がついたら、停滞していたものが、あっという間に進んでいる。終わるとまたさーっと撤収して、もとの静けさが戻ってくる。
たまにやってくるその人は、痛みを伴うことがあるけれど、よいものを残してくれる。台風が海をかき混ぜて、自然界の流れを作るように。
「台風が過ぎ去って」
雲海が見えるというホテルに泊まった。朝、外を見ると、その日は見ることができなかった。
ホテルの露天風呂に行ってみる。扉を開けると、誰もいない。目の前に、遠くの山々の緑が見えた。空気がキーンと冴えて清々しい。
ひとり、湯船に浸かった。少しぬるめのお湯に心地よく包みこまれる。静かだ。露天風呂は、高い場所にあるので、空中に浮いているよう。空に手を伸ばしてみた。朝の光をうっすらと浴びた白い空の中にすーっと吸い込まれそうになる。雲海が出たときは、ここも雲の中になるのだろうか。
ふいに、入り口の方から声がした。はっと、目が覚めたような気がした。
「ひとりきり」
赤、緑、青。最近この3色で迷ったばかりだ。
欲しいと思ったペンの軸の色がこの3色だった。
いつも持ち歩くから、気に入ったものがいい。
ぱっと目をひく赤は、持っていると元気がでそうだ。かっこよくもあるし、かわいくもある。
緑は、優しげでおしゃれにみえる。目にも良さそう。青は、スマートだ。これを持っていたらちょっとできる人にみえそう。
手とのなじみ具合を見てみたりする。そうだ、自分の茶色の手帳と合わせたらどうだろうか。パキッとした3色は、どれもよく映えて相性が良さそうだ。
んー、選べない。もう最初に目についたものにしよう。きっと今の気分にしっくりきているはずだ。そして、一番落ち着く気がした緑を新しい相棒に決めた。
「Red,Green,Blue」