追いつめられて、感情がぎりぎりのとき。
公の場では、涙なんか見せたくないし、悲しい表情もしたくない。なんでもない顔をして、いつも通りに色々なことを進める。
でも、感情の器はすれすれで、ちょっとしたことで、こぼれそうになる。ぐっとこらえて、平常心に戻そうとする。
他の人には、気づかれたくない。かなうなら、自分だけのバリアを作ってその中にいたいくらいだ。なのに、ふとした時に、誰かが「大丈夫?」と声をかけてくれることがある。
「大丈夫」と言いつつ、感情の器が大揺れに揺れて、溢れてしまう。目にじわっと涙が浮かぶ。
やさしさなんて、いらないのに。心の底に溜まっていた固いかたまりがとけていく。
「やさしさなんて」
初めて訪れる歴史ある商店街を歩くのは楽しい。所々、シャッターが降りたところもあるけれど、活気がある。
古くからあるお店と、新しいお店とが混じり合う何とも言えないごちゃ混ぜ感が、妙に落ち着く。でも、夏の商店街は暑い。店からもれてくる冷房の風に少しずつあたりながら歩く。
奥に進むにつれ、長い歴史の重みのようなものが感じられてくる。今まで積み重ねられた色々な商品、人との会話、そんなものの思いが商店街の中をひっそり取り巻いている。
商店街と商店街の継ぎ目に出た。そこを横切る小道に立つ。買ったばかりの水を飲みながら一息つく。明るい外の陽気に照らされると、ここは現在と過去をつなぐ道のような気がしてくる。
表通りのビルの脇から、強い風がさーっと吹き抜ける。その風にあたりながら飲む冷たい水は、とてもおいしく感じられた。
「風を感じて」
朝から寝坊もせず、外は澄みきった風が心地よい。信号も踏切にもひっかからず、電車にはすっと乗って座れる。出会う人とは、気持ちのいい挨拶を交わす。当たり前のことがするすると流れていく。
まさかの場所で、会いたかった人にばったり出会う。呼吸が合うかのように。
そして、夕方には目の前に大きく広がる空に出合う。赤く染まり、夜の青と混ざり合う。そのグラデーションがあまりにダイナミックで。
あー。これは夢じゃないんだと思う。
「夢じゃない」
悩んだり、迷ったりして、自分でもよくわからない気がする時は、色々な人に聞いてみたりする。アドバイスをもらったり、自分で気持ちを話しながら、また、考えてみる。
たまには、最新のあのテクノロジーに頼ってみたりする。的確な答えに確かに、と思いつつ、やっぱり考え続ける。
方々から情報を集めて、考えに考えているような気がしている。でも、本当はどうしたいか決まっていて、そのことを検討しているのだ。
心の奥深いところに置いている羅針盤があって、それが示す方向に進んでいく気がしている。
「心の羅針盤」
よくしゃべるくせに、肝心なことは何も言おうとしない。なんなら、こちらに言わそうなんてしてくる。
上機嫌かと思ったら、時々冷たい。突然無口になったりして、とても面倒くさい。
それなのに、別れ際には必ず、「またね」と、ふわっとした笑顔で言う。すごくずるい。
「またね」