水上

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8/17/2022, 12:38:16 PM

いっそ手放してしまえたら、どれほど楽だろうか。文字や言葉に対する、もはや執着にも近い気持ち。意図的に植え付けられた好みでも、確かに自分の中で根付いて育まれてしまった一つの性質。言葉の持つ音や雰囲気に惹かてしまう、この気持ちを。捨てられたらと、何度思ったことか。この執着が私を救ったのであり、同時に死ぬまで苦しむんだろう。


〉いつまでも捨てられないもの

8/16/2022, 11:03:57 AM

夏の青さが目に染みて、歪む視界はそれでも青い。ひりひりと焼け付くような暑さが、肌にも喉にもこびりつく。落ち着こうと取り繕う深呼吸の熱気が寄越す不快に、余計に焦る。乾きを感じてからでは遅いのだと、CMでも言っていた。それでも、やりきったことに安堵する気持ちが大きい。ぐらつく視界ももつれる足も、どうってことはない。向こうから、慌てた顔で走り寄る仲間の姿が見えた。そんな顔するなよ。勝ったぞ、最後の夏に。この仲間で迎える最後の機会。最高のフィナーレだ、笑えよ。


〉誇らしさ

8/15/2022, 10:07:09 AM

指先に紙の質感を感じながら、ゆっくりとページをめくる。言葉の渦に溺れながら、思いを馳せる夜の海。暗く深い水底に、沈んでいるきらめき。届かなかった思いが、言葉が、きっとそこにはひしめいている。叫びのような、涙のような、行き場のない思い。そこにあなたもいるような気がして、窓の外に視線をやる。真っ暗で何も見えない。時々波の間に、月の光がささやかな色を落とす。いや、あれは海底のきらめきかもしれない。誰かが吐き捨てた感情はきっと、今日も海の底から深い夜にだけ、月明かりに誘われるように音の無い主張をにじませている。

〉夜の海

8/14/2022, 1:51:55 PM

買ってもらったばかりの新しい自転車に乗って、前を行くあなたの背中を必死に追いかけた。アスファルトも砂利道も坂道もずっと足を止めず。方向感覚がないから、見失えば迷子待ったなしの状況。ゆるんだ日差しの中、それでもまだ熱気の残る夏の夕暮れ。意味も、目的地もないまま。

〉自転車に乗って

8/13/2022, 10:23:06 AM

「病は気から」なんて、飽きるほど聞いたけど。それなら気の病みはどこから来るのだろうか。

「はい、今日のプリントとノートの写し」

見慣れた部屋の中。君はいつもの場所に座って、うつむきがちにぼんやりしてた。いつも通り持ってきたものは机の上に置く。

優しすぎる君だから、多くを抱え込んでしまったのかもしれない。誰の痛みも、苦しみも。我が事のように耳を傾け、捉えた果てのがんじがらめ。助けてあげられたらいいのに、その術を持たない。無力さに打ちのめされながら、今日もまた君のとなりに座る。

口をついて出そうになる思いを改めて頭の中で吟味する。どれも言葉にすればなんだか妙に安っぽくなる気がする。もちろん君がそんな風に受け取らないことは知ってる。それでもまた、今日も言わないことを選んだ。ただそばにいる。それが自分なりの最善。

〉心の健康

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