指先に紙の質感を感じながら、ゆっくりとページをめくる。言葉の渦に溺れながら、思いを馳せる夜の海。暗く深い水底に、沈んでいるきらめき。届かなかった思いが、言葉が、きっとそこにはひしめいている。叫びのような、涙のような、行き場のない思い。そこにあなたもいるような気がして、窓の外に視線をやる。真っ暗で何も見えない。時々波の間に、月の光がささやかな色を落とす。いや、あれは海底のきらめきかもしれない。誰かが吐き捨てた感情はきっと、今日も海の底から深い夜にだけ、月明かりに誘われるように音の無い主張をにじませている。
〉夜の海
8/15/2022, 10:07:09 AM