「もうすぐ冬になるね。」
エゾリスさんが言いました。
「ああ、そうだね。」
シマリスさんが言いました。
「ボクはさあ、冬、きらいじゃないんだよね。
そりゃあ食べ物とるのが大変になるけどさ。
空から降ってくる、白くてちらちらするあれに会えるし、世界が真っ白になって、その白いのが降り積もる音しかしない感じとか、ほんと、すきなんだよね。
木が透明なのに覆われて固まってたり、
光がキラキラ降ってる時もきれいなんだよなあ。」
「ああ、そうなんだ。」
シマリスさんが、こっくりこっくりしながら話を聞いた後、言いました。
「ボクは、そういうの、なにもしらないから。」
ふわあー、とあくびをしました。
「えっ、なんで?」
灰色ふわふわのエゾリスさんが言いました。
「だってボク、ずっとねてるもん。
冬の間?1年の半分くらいねてるんだよ。」
「なんだって!?
冬を見たことがないのかい!?
そんなにねたら頭ズキズキするよ!?」
「ああ、ごめん。
せいかくには何度も起きて巣穴でご飯を食べているよ。
今年も木の実、いっぱいたまったし、そろそろねようかな。」
しましまのシマリスさんは、眠そうに、じゃ、と片手をあげて去っていきます。
「つぎいつ会えるのー?」
エゾリスさんの大きな声がシマリスさんを追いかけます。
「桃色のお花がいっぱい咲くころかなー。」
「………
だいぶ、先だね………」
まだ日差しは暖かく、風が冷たい頃のお話。
「冬になったら」
マフラーを巻いて、僕たちは、銀杏の葉がちらちらと降る街を歩く。
桃色のマフラーがきみに似合っていてかわいいと思う。
そんなきみは
「はなればなれにならないように。」
と、まるで子供扱いするようなことを言って僕の手を繋いだ。
人が混んでるわけでもなし、ただ手を繋ごうとしただけだと思う。
なんとなくうれしい。
空気が冷たいから、よけいにきみの手の温度がわかりやすく伝わる。
きっと僕の手の温度もきみに伝わっているだろう。
繋いでる手から温度が行き来してる。
ほんとうに僕たちは今、はなればなれじゃないね。
「はなればなれ」
落っこちてるまんまるオレンヂの毛玉
根本から立ち上がってる弱々しく細い毛は
空気の流れに微妙にふるえる。
毛玉は、呼吸のリズムで膨らんだり萎んだり上下する。
見ているのはミルクの夢か。
小さな温度のオレンヂの毛玉。
「子猫」
日差しは暖かくても、空気は透明で冷たい。
青色のタータンチェックのストールをぐるぐるに巻いて、一時間に一本の電車を待つ。
ホームの後ろには色づいた木々が並ぶ。
さらにその後ろには山がある。
空気に溶けるような風が吹くと、木々から葉が剥がされ落ち、ホームに落ちてた葉たちと一緒になって、カサカサ音を立てながら輪を描く。
並木の葉の隙間で光はきらきらと揺れ、黄色の葉は光を透かす。
遠くに電車の影が見えてきた。
「秋風」
最近朝、起きづらくなってきた。
寒くなるとみんなそんなもんでしょう?
ああ、起きたくない。
でも起きなくちゃ。
起きたくない。
そんなわたしにおふとぅんは、微笑んでこう言うんだ。
『また、会いましょう。』
おふとぅん〜〜〜!!!
「また会いましょう」