sunao

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11/2/2024, 11:39:49 PM

乗員7名の広い宇宙船。
船の中で何の病か、仲間が次々と倒れ、死んでいってしまった。
活発だった船員が、段々と動けなくなり、食事も飲み物も摂らず眠ってばかりになり、そのまま静かに息をしなくなる。
みんな同じ症状。
なぜか知らないがわたしだけは無事で、一人残されてしまった。
もうずっと一人。

そして食料も飲み物も残り僅か。

ほんとは母星やステーションに戻ることもできた。
でも仲間が次々と死んでいき、わたしの精神はまともではなくなり、それに、それらに戻ると仲間の死が決定的なものになるようで、戻りたくなかったのだ。

カプセルの中で、眠っているようなきれいな仲間達の体。
わたしが紙で作った花が、一輪ずつ置かれている。

わたしは大好きだったジュールの頬に、カプセル越しにキスをして、隣の自分のカプセルに入る。

そして一粒の飴玉を見つめる。

黒か藍かに無数の小さな銀色の粒がきらきらと散らばり、まるで宇宙を小さく固めたような粒。

これは仮死状態になる薬。

仮死状態の内に見つけられればわたしは息を吹き返し、見つからなければそのままほんとの眠りにつく。
どちらでもいい。

高い技術で作られた船は、どこまでも安全な航路を選択し、その性能は恒久的だ。

眠る7人を乗せて、船は穏やかに宇宙を進み続ける。




「眠りにつく前に」

11/1/2024, 9:03:06 PM

あれは幼い日の記憶。

どこまでも続く青い空

「行かないで!」

泣いて何度も叫んだ。


いつも一人で泣いてばかりのわたしの側に
どこからともなく現れて
こつんと、おでことおでこを合わせる。
わたしの友達。

ここにいるよ。
そばにいるよ。
言葉を持たないあなたとの愛言葉。


泣き叫んだ日から、あなたは現れなくなった。

婚約を祝うお茶会の席。
上品ぶった人たちの談笑の声。
紅茶の香りがむっとするほど辺りを包む。
わたしは光のない瞳でただそこに座る。

側の茂みがガサリと揺れる。
暗がりの中で金色の目が二つ光る。
久しぶりに現れた、黒い毛に覆われたあなた。
もう一つの物語へとわたしを誘う。
それは甘美な誘惑。

黒い犬は死の使い。
あなたを懐かしく思うことは死を想うこと。
わたしはずっと死に魅入られ、魅了されていた。

あなたはあるはずもない理想郷にとうとうわたしを連れていった。

永遠に。


口から血を流して倒れる花嫁。
人々の叫び声。





130作突破記念
「永遠に」

前回 10/23 120作目。
10作ごとぐらいにしている。
これまでのタイトルを並べて繋げたもの。
内容は続いていない。
インターバル的なもの。

11/1/2024, 12:36:57 AM

テラリウムやアクアリウムを育てるみたいに、地球を観るのがすきな宇宙人たち。


「うんうん。ゆっくりだけどオゾン層、回復していっているね。」
「50年もしたらオゾンホール塞がりそうだね。」
「あとは中の二酸化炭素濃度か。」
「ちょっと濃すぎかな?温度が高めだね。」
「でも人間たちがまた気をつけはじめているからね。オゾン層みたいにきっとよくなっていくよ。」
「そうだね。ボクとしては酸素を出す植物をもっと増やしてほしいね。」
「人間は、ハラスメントっていう感覚の違いから起きる不快な状況も、理解し、改善していこうとしてるよ。」
「そうそう。性別に関する固定観念もなるべくなくして、柔軟にものを見る努力もしているよ。」
「おもしろいねえ。」
宇宙人たちは顔を見合わせて笑う。

「でもさ…
この戦争とか、侵略とか、
どうにかなんないの?」
「地球のあちこちで起きるね。」
「いつまで経ってもなくならない。」
「くだらない。」
「これだけは理解できないねえ。
 せっかく作ったきれいなものも台無しにされちゃうし。」
「なんとかなんないのかねえ。」
「ボクたちは観るだけで一切の手出しはだめなルールだからね。」
「まだまだ理想のかたちは遠そうだねえ…。」
「でもきっと理想を捨てなければ変わっていけるさ。人間の多くは平和がすきなんだ。だからこそここまでの変化があったのだろうから。」
「そうだね。
 そうであってほしいね。」

青い地球をただ見つめて、そんな話をして、また見にこようね。と言う宇宙人たちなのでした。




「理想郷」

10/31/2024, 12:30:18 AM

ふっ、と風が吹いた時
懐かしさを感じることがある。

これはいつかに感じた風と似てる。

季節、天気、温度、湿度、風の強さ、時間帯
それらがちょうどよかったのか

まるで地球を一周回ってきた同じ風にまた出会ったような感覚になる。


こんにちは。
ひさしぶり。

でも繋ぎ止めてはおけないから
また いつか。




「懐かしく思うこと」

10/30/2024, 4:17:02 AM

もう一つお皿があったなら

お菊さんはあんなことになってないし

眠り姫も呪いにかけられずにすんだのかもね。

もう一つお皿があったなら

もう一つの物語が生まれていたのか。

いいや。

物語にならなかったかもしれない。




「もう一つの物語」

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