お風呂上がり。体はまだほんのりほこほこ。
洗って乾かしただけのすっぴんの髪。
外に出て夜空を見る。
満月の明るいやわらかな光と、どこからか漂う金木犀の香りを、髪の毛に纏わせる。
「やわらかな光」
わたしの片想いの相手はとてもクール、というか表情のあまりない人。
…片想い?じゃないかもしれないけどそこはまだはっきりと言葉で確認はしていないから…。
その彼と学校帰り、ベンチに座ってたい焼きを食べていた。
一丁焼きのカリカリのたい焼き。
「ここのたい焼きは皮もおいしいけど、あんこもとってもおいしいよねー。」
話しかけるも、彼は前方を向いてむしゃむしゃ。
表情に出ていないけど、ほんとはよっぽどすきなのだろう。わたしがまだ半分ほどなのに彼は食べ終えてしまっている。
食べ続けようとして、ふと視線を感じて、顔を上げる。
彼がわたしを見ている。
もう口の中のも無くなったみたいでむしゃむしゃもしてない。
じーっと見ている。
じーっとわたしの口元を、まるで獲物を狙う獣のような鋭い眼差しで見ている。
(ま、まさか…)
心臓がものすごい音をたてる。
彼の手が伸びてきたので目をぎゅっと瞑る。
口元のあんこを指で掬い取って食べた。
「そっちかーーーーー!!!」
「鋭い眼差し」
参考 : 10/10「ココロオドル」
2匹のモンシロチョウがもつれながら水色の空へ高く高く昇っていく。
穏やかな気候の中。
「高く高く」
きれいな瞳だと思った。
子供のように無垢で。
見てすぐに思った。
宇宙人かなにかだって。
白銀の髪の子供のような見た目。
でも鼻がほとんどないように見える。
目はとても澄んだ青色。
あ、あっちの子は紫色だ。
こっちはエメラルドグリーン。
髪型と目の色が違うだけでおんなじ顔。
そんなことを思っているうちに、僕は縛られてしまっている。
この鳥籠のような建築物の中で。
彼らが鳥籠から去り、入り口が閉まると、鳥籠はふわりと浮いて地面から離れた。
頭上にはUFOのようなものがある。
僕は思った。
子供って、無垢な目をして悪戯で平気で虫をいたぶり殺す生き物だったなって。
「子供のように」
参考 : 7/26「鳥かご」
運命の人に巡り会えたら。
なんて思っていたあの頃、僕はきみに逢えた。
学校祭の後夜祭。
踊りませんか?と恥ずかしそうにきみに声をかけられた。
ベランダでビールを片手に巡る星座を見つめながら、過ぎた日を想う。
あれから月日が経って、僕達は大人になった。
今は車で片道2時間。往復4時間の距離。
気安くは会いに行けない。
週末、やっと会えたきみを、力を込めて抱きしめる。めいっぱいに彼女をとり込む。
束の間の休息。
ココロオドル時間。
なのに、突然彼女が泣き出した。
涙の理由を尋ねても、泣いてばかりでなかなか話し出してくれない。
もう幕引き。静かにカーテンが下りるのを感じた。
いろいろあった楽しかった日々は終わったのだ。
僕は放課後に取り残されてるような気持ちになった。
110作突破記念
「放課後」
前回 10/2 100作目。
10作ごとぐらいにしている。
これまでのタイトルを並べて繋げたもの。
内容は続いていない。
インターバル的なもの。