高熱がずっと続いている…
混沌とした意識を彷徨いながら酸素マスクを曇らせる。
夜明け前までもたないだろう…
命が燃え尽きるまでもう時間がないのを感じる。
君からのLINEは来ているのだろうか…
確かめることさえできない…
そんなことが頭をよぎる。
カーテンの間から見える星空が泣く。
違う。
わたしの目に涙が溜まって歪んで見えてるだけ。
ああ、なんか明るい…
花畑が見える…
白とピンクのコスモス?
今の季節らしい…
きれいだなあ…
花畑を進んでいくといつの間にか夜景になっている。
花もチョコレートコスモスと青いダリア…
風が吹いたのか、ぶわっと花びらが舞い上がった。
花吹雪の向こうに、川と小さな船着き場と木のボートが見えた。
時間よ止まれ
まだ大事にしたいものがあるんだ。
そう思うのにわたしの足は裸足で赤と青の花を踏み散らして歩き、船着き場に向かうのを止めない。
秋に恋がれていた。
まだ秋らしい秋を迎えていない。
涼しくなったらこの熱も下がって体が楽になるかもと…
声が聞こえる…
誰の声かもわからない。
あの人かもしれない…
でもわたしの足は進むのを止めない…
90作突破記念
「声が聞こえる」
7/15 20作 7/27 30作 8/4 40作 8/14 50作
8/23 60作 9/3 70作 9/13 80作
突破記念の続き。
これまでのタイトルを並べて繋げたもの。
内容は続いていない。
インターバル的なもの。
ツバメたちがいなくなった。
青空を見上げて思う。
おいしそうないわし雲。
エノコロ草の揺れる草むら。
通り抜けるとひっつき虫がたくさんぼくの黒い毛についてしまう。
だからぱりぱりぱりと足で掻いてある程度落として、シロちゃんの家に行く。
ニャウー
縁側から降りてすりすりっと擦りつく。
チリチリチリッ
首の鈴が鳴る。
飼い主さんをちらりと挨拶するように見て二人で出かける。
浅く水の流れる川まで行って喉を潤し、バッタをつついたり、木や草の陰で過ごす。
日が傾いてきたらももいろに焼き上がったいわし雲を見て、
そのうちぼくの目の色みたいなまるい月を並んで眺めて
そろそろ帰ろうか。
そう言ってお家まで送ってお別れをする。
「秋恋」
セミの死体と思しきものにはさわらない!
これは忘れないように、大事にしたいこと!
死んでるかどうかなんてわからないんだから!
セミファイナルがこわい!
心臓にわるい!
「大事にしたい」
時間を止めたら、降ってるものの動きも止まる。
例えば冬なら
降ってる雪の動きを止める?
そしたら地面に着く前の雪をガラスの器によそって、シロップをかけて、かき氷にして食べる?
きっとお腹がいたくなるね。
春なら
地面に着く前の桜の花びらをたくさんとって、
桜茶のために塩漬けにする?
夏なら
雨を止めて…
止めてもその中を歩いたらけっきょくずぶぬれ。
止んでるうちに止めたいね。
秋なら…
落ち葉の掃除が楽になるのかな?
「時間よ止まれ」
月は大気がないから一日中空が黒い。
その中で地球は一番大きくて、いつもだいたいおんなじ場所に見えてる。
夜の地球は、暗闇に金色の粒々がちらちらしててとてもきれい。
ぜんぶ昼の地球も、ぜんぶ夜の地球も、その間の地球も、ぜんぶきれいだと思う。
ラピスラズリみたいな瑠璃色の地球は、たくさんの星空の中を、オルゴオル仕掛けみたいに、ゆっくりと回る。
僕らはたまにボートに乗って、もっと近くから地球の夜景を見に行く。
夜の地球の上にいると、金色の粒々の海の上にいるみたい。
所々光が集まっていたり、線になっていたり。
そうして僕らは旅を終えて、また銀色の星に戻る。
《月のうさぎのノートより》
「夜景」
参考 : 9/11「カレンダー」
9/17「花畑」