sunao

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9/14/2024, 11:11:06 PM

バシャ────ン!!!

突然すごい音がした。

窓から外を見ると、庭の奥の方から煙が立ち上っている。

あの辺りには大きめの木蓮が周りの木から離れて植えられている。

雷が落ちたか…。

雨も降っていないというのに…。

少し怖かったが、火の気の具合が気になって、様子を見に行くことにした。

木蓮の木は燃えていた。
燃え盛るまではいかないが、あちこちに火が燻っていた。
真ん中には大きな亀裂が入っていた。
そして枝の一つに、おかしなものがいた。

髪の毛は白い炎のように立ち上り、パリパリと静電気のようなものを発し、手足は金色の豹のようになっている少年が、枝に四つ這いでいた。

澄んだ青い瞳と目が合ったが、何も気にしない様子だった。

少し様子を見ていると、
枝から飛び下りて木の周りをぐるぐる回って歩いたり、立ち止まったり、また飛び上がり、枝に上ったりしていた。

その様子は、まるで木の命が燃え尽きるのを待っているように思えた。

しばらくすると、木蓮の命を吸い取ったように、
少年は急にすごい速さと跳躍力で空へと駆け上がり、雲の中を飛び跳ね、分厚いその一つの中へと姿を消した。

とたんに雨がぽつり、ぽつりと降り出し、激しくなったので、慌てて家の中に駆けて行った。

雨粒を払い、タオルで頭を拭いた。
外はザーザー降りだ。
これなら火も消えるんじゃないだろうか。
というか、どうにもしようもない。

あの少年はたぶん、『雷獣』というやつではないか。
温かいコーヒーを飲みながら、調べて思った。




「命が燃え尽きるまで」

9/13/2024, 11:10:04 AM

静かな夜は終わりを告げて
チラチラキラキラ
真っ黒にスパンコールのような星のついた帳を
するするゆっくりと引いていく
帳の裾はグラデーションになっていて
やがて薄青く 光を透過させ
薄桃色を覗かせて
するすると さらに引いて
空は薄青と薄桃色へ
そして端になるほど帳は薄くなり
黄色から やがて朝の空の水色へと

そうして帳はすっかり上がり
星の光たちは朝の露を残して輝き
きょうも新しい 朝がくる



「夜明け前」

9/12/2024, 9:40:09 PM

些細なことでも、すべてがきらきらと、きらめきになる。

棚の上の貝殻は、時が流れたことを告げる。

あの日、月明かりの中、夜の海で踊るようにはしゃいでいたきみ。

跳ねた雫が襟ぐりの開いた白いワンピース姿の、きみの胸元にまで届いた。
そこに、きみの胸の鼓動を思い、きみの命の在り処を思った。
ほんとうは、僕の胸の鼓動を目に映るきみの姿にあてていただけなのかもしれない。

世界に一つだけの景色だった。
あんな時間はそんなにあるものではなかったのに、僕は、これからそんな時間がたくさんになる、そのうちの一つのようにしかあの時は思っていなかった。

すべては失ってから気づく。
僕に横たわる喪失感。

目の端にカレンダーをとめて、きみと連絡しなくなってからどれだけの時間が流れたのかと考える。

僕には本気の恋だった。
…だったと思う。

きみには?


先日街中で久しぶりに見たきみの隣には知らないやつが親しげにいて、きみは僕の姿を見つけても、なんでもない様子で、いつものかわいい顔で、にっこりと、微笑んでみせた。




80作突破記念
「本気の恋」

7/15 20作 7/27 30作 8/4 40作 8/14 50作
8/23 60作 9/3 70作 突破記念の続き。
これまでのタイトルを並べて繋げたもの。
内容は続いていない。
何作突破記念とか言っているがあくまで目安でけっこうてきとうに発動。
反応に関係なく自分が楽しいのでやってる企画。
インターバル的なもの。

9/11/2024, 12:54:18 PM

「!!
 大変だ!
 中秋の名月まであと1週間もないじゃない!」

うさぎがカレンダーを見ながら言った。

「地球まで餅つき用のお米をもらいに行かなくっちゃ。」

「地球では最近お米がないない言ってるらしいよ。」

もう一羽のうさぎが地球から取り寄せた新聞を読みながら言った。

「ええっ!!
 それはこまる!
 ぼくらのお米はあるかなあ。」

「きっとあるよ。
 JAのおじさんとのお約束だもの。」

「そうだね。
 JAのおじさんとのお約束だものね。」


さてさて、JAのおじさんはちゃんと今年もお米を用意してくれているでしょうか。

答えは9月17日。中秋の名月の日。
うさぎがお餅つきをしているかどうかで…。



「カレンダー」

9/10/2024, 4:11:30 PM

ツバメの暮らしは田んぼと連動しているみたい。

稲刈りが終わる頃、たくさんのツバメたちが電線に一列に並ぶ姿を見るようになる。

ピチクリピチピチ

会議でもしているのか。

そして第一陣、第二陣と過ぎていくごとに
あれだけビュンビュンにぎやかだった空からツバメの姿が消えていく。

電線に一列に並ぶ姿は学習発表会の終わりでのあいさつのよう。


そして空は静かな冬を迎える準備をする。



「喪失感」

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