「ああ、こんなところにあったのね。」
日記帳も兼ねた少し厚めで重みのある手帳。
今のいままで存在すら忘れてしまっていた。
いけないこととわかりつつお掃除の手を止めて
ぱらぱらとページをめくる。
スケジュールのページも日記のページも
一日一日を大切にしようと必死に書きこんでいたことを思い出す。懐かしいやら恥ずかしいやらで苦い砂糖を舐めたようだった。
「去年の今ごろは何をしていたっけ。」
わざわざ書くほどのものではないスケジュールだらけ。
日記も変に前向きなことばかりで笑ってしまう。
「がんばっていたのね。私も。」
びりびり、びりびりと役目を終えた手帳に別れを告げる。
「今の私にはね、生きがいがあるの。太陽の化身。
アポロンのような人。あたたかくて力強くて。
優しくて不器用で…可愛い。」
ぱらぱらとゴミ袋の中に落ちた私と目が合った。
去年の日付。去年の私。
一年後に人生が変わってしまうことをこの私は知らないのだ。
「だからね、焦らなくても大丈夫よ。」
一年後
昔好きだった人たちの記憶。
小さなお花が咲いた野原がめちゃくちゃに踏み荒らされて無くなってしまった記憶。
恋なんてしない。好きな人なんていらない。
これは私が私になる前の記憶。
あなたに出会って私は私になれた。
私が私になれて初めて好きになった人。
それがあなた。
変なことを言っているかもしれない。
でも私の初恋はあなた。
忘れ去られた野原にぽつりと咲いた小さなお花。
ずっとずっとこの時を待っていたんだ。
これはたったひとつの大切な私の
初恋の日
「そんなのやだ!」
「ははは。」
「よくあるたとえ話だろ。マジにとるなよ。」
明日世界が終わる。と、したら何をする?誰と過ごす?そういうたとえ話。会話のネタ。お題。
やだよ。考えただけでぞっとする。
大好きなオレンジジュースも赤い箱のチョコも
黄色の袋のハーブキャンディももう食べられない。
いやいやちがうちがうそうじゃなくて。
「普段通りに過ごす。愛する人と抱き合って眠る。
好きなものを好きなだけ食べる。ちょっと悪いことをする。最後まで抗ってみる。まあいろいろあるな。」
「他人のじゃなくてあんたの話を聞きたいんだけど。」
「はは、どうだろうな。先に君が話したまえよ。」
「僕は特に無いよ。まあ、うん。」
あ、そうか。そうだよね。
ふたりはふたりきりで最後を過ごしたいよね。
私はおじゃま虫だな。害虫だ。
「よし決めたよ。私はね。」
ふたりがふたりきりで過ごせることを確認したら
さんにんでピザを食べてコーラを飲む。
そしてオレンジジュースとチョコとキャンディを持って
ふたりの知らないどこか遠くに行こう。
ひとりは嫌いじゃないし、慣れているから。
私の大好きなふたりと離れるのはさみしいけれど
それが良さそう。
うんうん。だから今日も
みんなで楽しく過ごすんだ。
大切に、大切にね。
明日世界が終わる
もし本当にそんな日が来たら
ふたりとも、じゃあねって
泣かないで言えますように。
明日世界が終わるなら
君と出逢って、か。何か変わっただろうか。ううん。
正直あまり変わってはいないなあ。
規則正しい生活になったとか身長が伸びたとか
女の子にモテるようになったとかそんなことは全く無い。残念ながら。
むしろ悩みが増えたかもしれんなあ。ああ。
どんなテーマにしようかなとか誰を登場させようかなとかそもそもネタが浮かばないなんてこともしばしばでね。
これが私の人生に何かプラスになっているかはわからない。でもいいんです。そう。いいの。
ハートの数に一喜一憂したっていいの。見てくれた方がいる、ハートを送ってくれた事実、それだけでいいの。
なんやらなんやらで3ヶ月休まずに君と続いている。
3日坊主の私がここまで続けているのはきっと
君と、君の親御さんと、君のまわりに集まった友人達と
相性というか波長が合うんだろうね。
だらだらと自分語り失礼しました。
みなさんいつもありがとう。
のんびりと人生歩んでいきましょ。
書く習慣とともに。
君と出逢って
あ、起きてしまった。わりとしっかり目に。
こういうことはたまにあるが良いものではない。
それに地震の前は毎度目が覚めるから用心しておくか。
…いや違うな。今回は。
自分達に揺れは来ない。
揺れているのは隣の部屋だ。
聞き耳をたてているわけではないが
ベッドの軋む音。男女の息づかい…それどころか声まで聞こえて来る。おい勘弁してくれ。
どのくらい耐えたのだろうか。
ようやく静かになったタイミングで息をはいた。
知らぬ間に息を殺していたらしい。
「終わったみたいだね。」
…起きていたのか。俺は悪くないのに何故か体が跳ねた。
「彼氏さんが来ていたのは知ってたけど…やっぱり壁薄いねこの家。」
他人のそういうのを聞いてよくそんな冷静でいられるな。この人はやはりただものじゃない。
そして俺は何を動揺しているんだ。
そのひとことを最後にあたりがしーんと静まりかえった。さっきまでが嘘のように。
隣からはすーすーと穏やかな寝息が聞こえる。
だから俺は何をがっかりしているんだ。
寝よう。寝るんだ。何がなんでも。
しかし目を閉じても耳は閉じることが出来ない。
「どうかしたの?」
ふふ、とかすかに揶揄う声が聞こえた。
耳を澄ますと