あ、起きてしまった。わりとしっかり目に。
こういうことはたまにあるが良いものではない。
それに地震の前は毎度目が覚めるから用心しておくか。
…いや違うな。今回は。
自分達に揺れは来ない。
揺れているのは隣の部屋だ。
聞き耳をたてているわけではないが
ベッドの軋む音。男女の息づかい…それどころか声まで聞こえて来る。おい勘弁してくれ。
どのくらい耐えたのだろうか。
ようやく静かになったタイミングで息をはいた。
知らぬ間に息を殺していたらしい。
「終わったみたいだね。」
…起きていたのか。俺は悪くないのに何故か体が跳ねた。
「彼氏さんが来ていたのは知ってたけど…やっぱり壁薄いねこの家。」
他人のそういうのを聞いてよくそんな冷静でいられるな。この人はやはりただものじゃない。
そして俺は何を動揺しているんだ。
そのひとことを最後にあたりがしーんと静まりかえった。さっきまでが嘘のように。
隣からはすーすーと穏やかな寝息が聞こえる。
だから俺は何をがっかりしているんだ。
寝よう。寝るんだ。何がなんでも。
しかし目を閉じても耳は閉じることが出来ない。
「どうかしたの?」
ふふ、とかすかに揶揄う声が聞こえた。
耳を澄ますと
5/5/2024, 9:52:53 AM