粉末

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3/16/2024, 4:26:45 AM

「ちょっと待て。」
ここで?このタイミングで?嘘でしょ。
いやしかしここは引くタイミングだ。わかってるさ。
何やら良いアイデアでも浮かんだらしい。
使い込まれたノートへと軽やかにペンが走る。
暗めの色をした彼女の目がキラキラ輝き
まるで宇宙が星々を生み出しているようだ。
おあずけは残念だがでも自分の心は穏やかに拍動する。
君の目から星が生まれて
俺の心から星が溢れていく。
そうして溢れる星が無くなったら
また君の気を引こうと思う。
手を噛むなんてことはしないけど
キスくらいは許して。
今度は驚いた君の目から星が溢れて
俺の心から星が生まれていく。



星が溢れる

3/14/2024, 10:48:10 AM

「よしよし。よくがんばったね。」

鈴蘭のように白く可憐な指先が慈しむ器には
たしかに命があった。
自分が眠っている間に空へ飛び立ったようだ。

長く厳しい旅を終えたその瞳は見えないが、
あたたかでやさしい大樹の様なこの人の手に包まれ
きっと安らかなのだろう。

いつか俺が死ぬ時は
鳥になってこの人のぬくもりに包まれていきたい。
死に場所も選ばせてくれないであろうこの魂にも
安らかな最期を用意してくれ。

なあ神様。お願いだから。



安らかな瞳

3/13/2024, 1:12:00 PM

長距離バスでの小旅行。
帰りの車内で君がぽんやりとした声になったから
俺はもたれかかって寝て良いよと言った。
ごめん、とひとこと呟いてすぐに眠った君。
可愛い寝顔。他のやつに見せたくなかった。
俺は少しも眠たくなくて
ひざ掛け代わりにした上着の中で
こっそりと君の手を握った。

ひとつのベッドで眠るようになってからも
こうして眠る君の手を握ることがある。
なあお願いだよ。俺頑張るから。
これからもずっと
俺の隣でその寝顔を見せてくれ。



ずっと隣で

3/13/2024, 3:21:51 AM

「ねえ。最近何読んでるの。」
「うん?これかい。刹那的に生きる少女達の友情物語さ。といってもギャグだがね。一部の描写が細かくてなかなか面白いよ。」
「…読み終わったら貸して欲しい。」
「ああいいとも。ぜひ感想を語り合おう。」

全て知りたい。この人の全てだ。
この目を見ても心の内を見透かすことは出来ない。
この人の読む本を読めば理解出来るだろうか。
僕の知らないこの人が存在するなんて耐えられない。
教えろ。隠すな。僕に見せろ。

僕はさあただあんたのことを



もっと知りたい

3/11/2024, 12:41:10 PM

「おはよ。パンあるよ。ジュースも。」
「おはよう。来ていたのか。」
ひとりで迎える遅めの静かないつもの朝。
そんな日常が少し狂い始めたのはいつからだったか。

「パンのお礼にコーヒーはいかがかね。」
「カフェオレなら飲む。ミルクたっぷりでね。」
「承知したよ。少し待っていなさい。」
いつのまにかこんなやりとりが日常になってしまった。


「最近SNSを更新していないが忙しいのかい。」
「うーん。そうじゃないけど。」
「うむ。けど?」
「…なんかもういいかなって。こうやってあなたと話してる方が楽しいし。」
「そりゃ嬉しいな。私もだ。」
「そっか。やったね。」
「ふふ。さあどうぞ。特別なカフェオレだ。」
「ありがと。いただきます。」
「こちらこそ。いただきます。」

特別なことは特に無い。
なに、刺激を求めることだけが人生じゃないさ。
特別じゃない特別な日よ
なるべく長く続いておくれ。




平穏な日常

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