何と無く、ふと気が付くと、最近よく見かける。
特に探しているわけでもないが、存在感に視線を奪われるのだろう。なかなかの体躯の持ち主でもあるが、その姿は爽やかであり美しくもある、そして様々な表情を垣間見せる。それが目を離せないのだろう。
しかし、こんな姿をまさか見せつけられるとは予想外であった。何が要因なのかわからないが憤然とした態度になり、荒んだ行動を先程から繰り返している。
私もそれに巻き込まれてしまい、なかなかの被害にあった。偶発的とはいえ、仕方ないことだが、もはや諦めの境地である。ただ呆然と私は途方に暮れて、その様子を眺め続けることしか出来なかった。
一時的な避難場所として、勝手に他所様の軒下を使用してしまい心苦しいが、暫くそっと身を潜めることにした。
「酷い夕立ですよね…。入道雲は何処へ隠れてしまったのかしらね」
軽やかな可愛らしい声が、私の肩越しからそっと囁かれた気がしたので振り向く。いつから居たのだろうか、嫋やかな女性が穏やかに微笑んでいた。
それが私と彼女の出逢いである。
『 入道雲 』
ふんわりと私の顔を撫でる風は、水と土の薫りが混ざり合いになり、鼻腔を掠めていく。涼やかな風の心地よさに身を委ね、ほっと息を吐いた。
ごろりと縁側に寝転がり、冷たくなり始めた板の心地良さに目を閉じる。
ちりん、ちりんと辺りに響き渡る風鈴の音を静かな夕闇が受け止めていく。庭先に咲くクチナシが艷やかに耀り、花弁に雫を滴らせていた。
打ち水は祖父の日課である、そして此処にいる全てのモノ達への至福の褒美でもあった。この日々が失われないことを私は願い続けよう…。
『 夏 』
小さな頃から私のアタマの中で視る景色は目の前に現実として拡がる世界とは違っている。
ときには触り匂いを楽しむこともできる。ワタシとして存在しているのか別の存在なのかはさておき、寝れない夜に最適である。
ずぶりと沈み浸りすぎると抜け出したくなくなるのが難点だ。
さて今日は何を魅せてくれるのだろうか…。
『 ここではないどこか 』