何と無く、ふと気が付くと、最近よく見かける。
特に探しているわけでもないが、存在感に視線を奪われるのだろう。なかなかの体躯の持ち主でもあるが、その姿は爽やかであり美しくもある、そして様々な表情を垣間見せる。それが目を離せないのだろう。
しかし、こんな姿をまさか見せつけられるとは予想外であった。何が要因なのかわからないが憤然とした態度になり、荒んだ行動を先程から繰り返している。
私もそれに巻き込まれてしまい、なかなかの被害にあった。偶発的とはいえ、仕方ないことだが、もはや諦めの境地である。ただ呆然と私は途方に暮れて、その様子を眺め続けることしか出来なかった。
一時的な避難場所として、勝手に他所様の軒下を使用してしまい心苦しいが、暫くそっと身を潜めることにした。
「酷い夕立ですよね…。入道雲は何処へ隠れてしまったのかしらね」
軽やかな可愛らしい声が、私の肩越しからそっと囁かれた気がしたので振り向く。いつから居たのだろうか、嫋やかな女性が穏やかに微笑んでいた。
それが私と彼女の出逢いである。
『 入道雲 』
6/29/2023, 4:21:23 PM