ふんわりと私の顔を撫でる風は、水と土の薫りが混ざり合いになり、鼻腔を掠めていく。涼やかな風の心地よさに身を委ね、ほっと息を吐いた。
ごろりと縁側に寝転がり、冷たくなり始めた板の心地良さに目を閉じる。
ちりん、ちりんと辺りに響き渡る風鈴の音を静かな夕闇が受け止めていく。庭先に咲くクチナシが艷やかに耀り、花弁に雫を滴らせていた。
打ち水は祖父の日課である、そして此処にいる全てのモノ達への至福の褒美でもあった。この日々が失われないことを私は願い続けよう…。
『 夏 』
6/28/2023, 3:34:05 PM