流れ星に願いを。
願わないよ。だって叶わないもん。
星も流れない。だって私には見えない。
見えないものに願えなんて、そんなの無理でしょ。
「…ねぇ、君もそう思うでしょ」
願わないけど、願えないけど、
願いが無いわけじゃない。
見えないなら、じゃあ触れたら良い?
そう言って君がくれた星の玩具。
私にとっての流れ星。
あの日手のひらに落ちてきた星。
私にとっての星に、叶うはずもない願いを懸けるの。
もう一度だけ、君に会いたいと。
星の光を閉じ込めたようなその瞳を見ていると、
僕はいつも動けなくなってしまう。
キラキラと輝きを放つそれは、表情によって様々に形を変え、持ち主をさらに輝かせる。
あなたは眩い一等星のような人だ。
ペンライトの星空の中でも決して見失うことのない道標になる星。
あなたの瞳、輝き、その他すべて。
あなたの周りには星が溢れている。
その強い光の陰になる僕は、
きっとあなたから見えることはないんだろうと。
もうすぐ引っ越す。
今より、ここより遠くの街へ行く。
ここでできた人間関係ぜんぶ置いていって、
また一から構築する。
きっともう二度と会わないだろうなって人もいる。
話はしたけれど、遠い距離を埋めてまで頑張って会おうとはきっとならない。互いに。
それがほんの少し寂しくもある。
人が好きなのにちゃんと好きになりきれない自分への寂しさと、誰かの「好き」になれない寂しさと。
遠くの街でまた私は始める。
今度は初めて誰かの「好き」になれることを祈って。
お気に入り。
その言葉が嬉しくて、苦しくて仕方なかった。
学生時代ろくに人と関わらず、メイクなんてほとんどしたことがないまま迎えた社会人一年目。
配属された部署にいたその先輩はキラキラ光っていて、まさに華という言葉がぴったりだった。
何の因果かその先輩は私の教育係になって、気が付けばよくお出かけするほど親しくさせてもらっていた。
そうして過ごすうちに私の先輩への気持ちも憧れから少し好意を含んだものへと形を変え、あんなに化粧っ気が無かった私が「少しでも恥ずかしくないように」と毎日ちゃんとメイクをするようになっていた。
先輩と仲良しだという他部署の人に会った時、いつも話聞いてるよといわれたときはとてつもなく嬉しかった。仕事外の先輩の中に私の存在があることに感動すらした。
本当に仲が良いんだねと話す他部署の人に先輩が返した、「そうだよ〜!だって大好きなお気に入りなんだもん」という言葉が忘れられない。
ねぇ先輩、私人と関わることに不慣れすぎるから、そんなこと言われたら嬉しくなっちゃうよ。ましてや好きな人に言われるんだもん、都合よく勘違いしちゃうよ。
こんな気持ちはこの先一生打ち明けることはない。
大好きな先輩の「可愛いお気に入り」として、ずっとずっと隣にいられるだけでいい。
また、目が覚めた。
今度は四半刻も眠れていない。
君にも少ししか逢えなかった。
ここ最近ほぼ眠るだけの生活をしているせいか、
いやに目が冴えてなかなかもう一度眠りにつけない。
前まで、君を喪ってすぐの頃はむしろ眠れないほどの精神状態だったのに。
布団に包まり暗闇をぼうっと眺めていると、
ゆるく、ゆるく、微睡みが誘ってくる。
この気配は君に逢える世界一幸せな合図だ。
今度の眠りはもう少し長ければいい。
君に会えるならこのまま埋もれて永遠に目覚めなくたっていいんだ。
君のいない世界は酷く暗くてつまらない。
自分が創り出した「君」が呼ぶ声に意識を沈めるとともに、ふっと世界は暗転した。