題 春風と共に
わぁ、春風、あったかいね!
私が言った言葉にあなたはふっと微笑む。
「うん、暖かいね」
あなたの笑顔に嬉しくなって私も笑顔になる。
「ねぇ、桜が綺麗だよ、みてみて、沢山降って雪みたい」
わたしが指差した先をあなたはゆっくりと見上げる。
桜色の薄い花びらがひらひら、はらはらと私たちの前を柔らかく旋回して落ちていく。
「うん、綺麗だね、ちょっと寂しいけど」
あなたの少し寂しげな表情に、私も悲しい気持ちになってしまう。
「桜が全部散っちゃったら寂しいね・・・」
私の寂しげな表情に気づいたあなたは、わたしの頭に軽く手を乗せた。
「でも、また来年一緒に見よう、君と一緒にまた見たいな」
ふわっと頭のあたりが柔らかく優しく感じる。
あなたの触れた所がほんのりと暖かくて、私は胸の辺りに明かりが灯ったような気がした。
「うん、来年も一緒に見たいな・・・その先もその先も一緒がいいな」
私が照れながら切り出すと、あなたの顔がとっても優しくなる。眼差しが柔らかすぎて眩しい。
「そう言ってくれて嬉しいよ。僕も同じ気持ちだ」
ひらひらと周りを舞い踊る桜色の花弁達。
私たちはそんな中、まるでお互いしか存在しないかのようにお互いをただただ見つめていた。
題 涙
涙なんて拭いてよ、前向いてよって君は言うけど
いとも簡単に言うけど
そんなこと出来るはずない。
僕の気持ち分かるはずない。
そんなこと誰にも分からない。
だから僕は軽い敵意さえ覚えてしまう。
この気持ちを分かりもしないのに全てを片付けようとする君に。
前を向けるならとっくにしてる。
涙を出さなくていいならこっちだって泣きたくない。
それでもさ、出ちゃうものは仕方ない。
悲しいのは仕方ないでしょ?
だから、ただここで立ち尽くしてる。
悲しみにくれ(੭ ›ω‹ )੭ながら動けない。
僕のこの悲しみはどうしたらなくなるの?
消えることなんて一生ないんだろうね。
染み付いて染み付いてそれでも
いつかは薄くはなるはずだから。
薄い色になることを願って
今は涙にくれることしか出来ないんだと思うんだ。
それが今の僕なんだよって君に伝えたいな。
題 春爛漫
春なのになんだろうこの気持ち
全然楽しくない。
この桜の花びらを見ても手のひらに乗った淡い花びらを見ても
心が踊らない。
だってさ。君は僕のことみてないてしょ?
僕も君のこと考えても気持ちが踊らない。
どうしてだろう。
あんなに前は楽しかったのに。
春ってだけで君が隣にいるだけで、ただ笑い合うだけで、会話するだけで。
そんな些細なことが楽しくて。
君と見たこの淡い花びらが綺麗で一緒に笑いあったね。
だからかな。僕はこの花びらを見ればもう一度君と一緒にいた頃の気持ちを取り戻せるって思ってしまったんだ。
そんな気持ちは、ここに来て吹き飛んでしまった。
君と過ごした時間は、僕の中で綺麗な思い出だけど、今の君との時間は何も気持ちが動かない。
再認識してしまった君との距離。
あんなに大事だったのに。
大切な思い出は過去の箱にしまって
僕は前を歩くしかないのだろうか。
その時は君にサヨナラを言わないといけない。
この過去の記憶の箱を持ったまま
躊躇わず君にサヨナラを言えるだろうか。
言えるなら僕は新たな道を進むだろう。
過去の記憶に痛みを感じながら。
言えなければ君とこのまま心の動かない関係を続けるだろう。
それが僕にとっても君にとっても楽しい時間とはいえないものになってしまう。
どちらにしても痛みを伴いながら
選択の時は近づいている。