題 君の背中
君の背中ってなんでそんなに大きいの?
いつももたれかかると思う。
座ってる君の背中にダイブして、抱きしめると、うわってビックリした顔で私を見る。
それで、嬉しそうな顔するから、私も思わずにやけてぎゅーって抱きしめちゃう。
何よりも大事なんだ。
でも君の背中は大きくて、私じゃ抱きしめきれない。
私も君の助けになりたいのに、君に守られるだけじゃいやなのに、私が何かしたいのに、してもらってばかりだよね。
こうして、抱きしめても、君はそのまま受け入れてくれる。
私は君が大好きだから、それだけじゃ不満で。
もっともっと君にも大好きになって欲しくて。
君が私がいて良かったって思えるほどに感じてほしくて。
私が何かできれば、助けられれば、君が必要としてくれれば。
その考えが抜けない。
君は私を不意に振り返ると、手を引いて、君の前へすわらせると、私を抱きしめた。
「好きだよ」
それじゃ足りない
「マユミって可愛いよね」
違うもん
不満気な顔をしていたに違いない。
私が振り返って君を見ると、君は一瞬困惑したような表情になった。
「僕にはマユミが必要なんだよ」
「本当?!」
必要って聞いて即座に聞き返してしまう。
だって必要として欲しかったから。
「もちろん、当たり前でしょ?」
そう言って、私の頭を優しく撫でる君のこと、本当に愛しい。
「本当に本当?」
私が振り向いて確かめようとすると、おでこに軽くキスをされる。
「本当。むしろマユミ以外必要じゃない」
「私もだよ」
私の方が絶対に君が必要だ。
だからこそ、君に必要として欲しいと思ってしまう。
私が何も出来ないままじゃ、君にメリットなんてないじゃない。
そんなの、君は何も楽しくなんてないんじゃないかって。
「マユミがいてくれるから、僕は毎日楽しく過ごせるんだよ。マユミの存在に日々感謝してるよ」
「何も出来なくても?」
私がそう言うと、君は苦笑する。
「何も出来ないなんてことないけどね。でも、そうだよ。何も出来なくても、僕は君が好きだよ。君がいてくれるだけでいいんだよ」
「何かしてあげたいの、役に立ちたいの」
つい、言葉を重ねてしまう。
それじゃあ嫌だって思ってしまう。
「それなら、そばにいて微笑んでてよ。僕と話して、こうしてくっついてくれればそれで僕の助けになってるんだよ」
「そう…なんだね」
君の嬉しそうな顔に、私の顔も綻ぶ。
本心からの言葉って思えたから。
「分かった」
そうして君を抱きしめる。
やっぱり君の体は大きいけど、でも、もう焦りはない。
このままの私で愛されてるって分かったから。
題 誰も知らない秘密
題 静かな夜明け
何も起こってないようなそんな気がする日常。
僕の毎日はいつも、静かだ。
誰も何も入ってこないから、1人で起きて1人で散歩して1人で寝る。
そんな毎日だ。
ここは深い森。
だれとも行き合わない。
雪が降る。寒い中、毎日意味もなく散歩する。
家にいると1人を実感してしまうから。
動く物を見たいと思ってしまうから。
小さな虫でもいい。
冬眠している動物に思いを馳せるでもいい。
空を飛ぶ鳥を見るのでもいい。
1人ではない証を求めている。
歩けば歩くほど足はかじかんで、手にも痛みのあまり激痛が走る。
だけど、僕は歩く。
どこまでも歩いていると1人でも大丈夫な気がするんだ。
どこまでも歩いていると1人では無い気がするんだ。
散歩の最後は、ハイテンションになっている。
どこか少しだけ気分が向上して。
出た時の暗く虚無な気持ちから抜け出せている。
僕は1人なのか?
これからも毎日静かな夜明けを1人で見るんだろうか。
それでも僕の胸には期待がある。
春になって花が咲き誇り、命の誕生を目にするだろう。
僕は本当の意味で1人にはなれないのかもしれない。
そしてそれはとても幸せなことなのだろう。
題heart to heart
心臓ってただの臓器だよね?
感情ってどこから来るんだろう。
ドキドキしたり、ワクワクしたり、緊張したり、いつも心臓の辺りが動くような気がするんだ。
でも違うのかな?
ただの臓器なら、気持ちはないはずだもんね。
頭で感じてる信号が心臓に伝わって心拍数が早くなってるのを感情って思ってるのかな?
その割に、ただのドキドキとは違う、込み上げてくるような、沈むような、弾むような、様々な感覚に襲われてしまう。
私のハートには何があるんだろう。
他の人と暖かい感情の交流をしてるけど、それが心臓を弾ませるように嬉しくする。
大勢の人の前で発表する時、心臓が暴れ狂うようにのたうち回る。
人を好きになると、ドクドク早くなって甘い気持ちが込み上げてくる。
ただの臓器だとは思えない。
思えないけど、一体どこから感情は来るんだろう。
私は思う。
胸に手を当てて。
静かな鼓動を手のひらに感じながら、この胸で感じる無数の湧き上がる気持ちの正体は一体何なんだろうと考えながら、その正体は今日も分からないでいる。
題 永遠の花束
あなたに貰った花束、まだ私のそばにあるよ。
捨てられないでいる。
貰った時嬉しすぎて押し花にしてしまったから。
その栞をいつも持ち歩いてる。
ふと読みかけの本を開いた時、その花が目に入ると切なくなる。
いつも私に花束をプレゼントしてくれたあなた。
バラなんて、何十本ももらっても困るのに。
だけど、嬉しかった。
あなたがくれる気持ちが嬉しくて、私が笑顔になるとあなたもとっても嬉しそうな顔してくれるから。
だから、私の記憶の中のあなたは花束を抱えて満面の幸福そうな笑顔なんだ。
私の頭の中には永遠に色褪せない花束が消えないでいる。
そして、あなたから貰った栞がその記憶をいつも甦らせる。
昨日起こったことのように。
悲しいお別れの果てにあなたともう会えなくても。
あの鮮やかな記憶が、私にちょっぴりの切なさと微かな甘い感情を思い起こさせるんだ。
まるで淡い初恋のように。
もう色褪せてセピア色になってしまったとしても。