題 旅の途中
私はまだ旅の途中だ。
何も成してない。名前も知られてない。
ただの一般人だ。
いるだけで人気者の人とかいる。
みんなに好かれる人もいる。
私はそうじゃない。
1人でただここにいるだけ。
何かを成したいと思っているだけの一般市民だ。
他の人からは区別も何もつかないと言われるだろう。
今私が何をしてても、誰にも届いていないのだから。
私の作品はまだ手元に、それでも毎日毎日織り成されていく。
そして構成されて練り込まれている。
これを発表して、応募して、誰かの目に止まるのかは分からない。
だけど、今の時代、ネットで拡散する事だって出来る。
誰か一人の心に留まって、思い出して貰える作品になるかもしれない。
私が今思い出している作品のように。
どこか気に止めてくれる人がいるかもしれない。
だから、今は何も成してなくても、平凡でも構わない。
ひたすら、私の出来ることをするんだ。
完成させる為に。
私の心全てを表現した作品を、1人でも多くの人に届けるために。
私は今日も自分の文章と真正面から向き合っている。
題 まだ知らない君
知らなかった、君が悩んでること。
いつも笑顔だから分かりようがなかった。
いつも人のことを優先して考えているから、その心の奥底までは見てなかった。
いつも控え目で意見を言わないから、優しいから、君といると心地いいから、明るいから、癒しだから、君が悩んでるなんて知らなかった。
…少し考えれば分かるのに。
君が人を優先してる分、君は君を優先してないんだ。
人の苦しみや痛みや悲しみを受け取る分、君はいつも傷ついている。
体は傷ついていないとしてもね。
君が意見を言わない分、笑顔で飲み込んでる分、みんなの空気は悪くならないけど、きみの体の中の空気は淀んでるよね。
君だって言いたいことがあって、やりたいことがあって、通したいことがあるはずだ。
だけど、君は自分の中に淀んだ空気を循環させてしまう。
皆には綺麗な空気を提供して。
君はそのままで素晴らしいのに、君の意見存在そのものが本当に価値があるのに、君はそのことに気づかずに、皆のことを気にしてしまうんだね。
優しい君。
優しすぎるからその淀みにやられてしまうのかもしれない。
それに気づいた時はもう限界を迎えているのかも知らない。
僕はどんな君でも大好きだよ。
ワガママ言っても、こうしたいって言っても、こうしたくないって言っても、泣き叫んでも、拒否しても、否定しても、笑顔でいても、嫌味言ってても、馬鹿笑いしてても
どんな君でも大好きだよ。
君の価値は1ミリも揺るがない。未来永劫。
だから、そのままでいて。
やりたくない事だって言って、我慢しないで。
もし誰かが君を否定しても、僕は肯定する。
何度でも何度でも肯定する。
君がもう肯定しないでいいってば、って言いたくなるまで、しつこく肯定する。
どうして?
だって君が大切だから。
君の心の健康が僕には1番大切だから。
君が心から笑顔でいることが、僕には1番大切だから。
偽りの笑顔じゃなくてね。
僕の言葉が君に少しだけでも届いたら嬉しい。
僕の気持ちが誰かの心に欠片でも届いたら本当に嬉しいな。
ここに君を思う僕がいること、忘れないでね。
題 日陰
日陰だ。私はいつもひかげだ。
誰にも気づいて貰えない。
通り過ぎられる。選ばれない。
教室のすみで静かに時が過ぎるのを待つだけだ。
そんな人生望んでなかった。
望んでる人なんていないと思う。
私だってそうだ。
なんでそれなのに、こんな人生なんだろうって思うんだ。
私はずっと続けてるものがある。
それはピアノだ。
唯一ピアノを弾く時だけは心が落ち着く。
そんなに才能が溢れてるわけじゃない。
コンクールでも、最高で健闘賞だ。
銅賞も取れたことがない。
それでも好きなんだ。
指を走らせると響いてくる音色が、私の耳に軽やかに夢やかに届く。
音符が弾んで楽しく踊ってるみたいに感じる。
時に泣いているように、時に怒っているように。
そんな風に様々な感情を感じる。
私の指がそれらを作り出しているんだ。
創造神の気分。
そうしていると少しだけ心が落ち着くんだ。
教室では無価値かもしれないけど
誰にも必要とされてないかもしれないけど
私だって出来ることがある。
それで自分の心を癒すことが出来る。
それにね、先生は褒めてくれる。
いつも私の音が生きてるみたいですてきだって言ってくれる。
たまに一緒にピアノを弾いてくれるけど、そうするとリズムもメロディもどこまでもどこまでも広がって、私は創造の海にひたることが出来る。
無価値とは無縁のところにいるんだ。
そして、家に帰って、あったかい両親と楽しく会話する。
そうだね、また次の日の朝激しく憂鬱だけどね。
でも、私の世界は閉ざされてないと思うの。
何もかも無いわけじゃないと思うの。
世界はひとつじゃないと思うの。
教室の中だけのことを考えると絶望だけど。
私には音楽の世界がある。
イラストや、ゲームや、歌や、他の趣味の世界の人もいるだろう。
そして時間は動く。
永遠にそこにとどまる必要はない。
自分で動く選択をしたっていい。
だから、いつだって私には無限の場所が開けていると思ったの。
ひとつの場所のひとつの価値が私の全てじゃないって思ったの。
だから教室にいる私を全てだと思って落ち込まないようにしたいなって、思ったんだ。
そう転換するとフシギだね、ちょっと心が軽くなったんだよ。
題 帽子かぶって
帽子を目深に被って。
誰にも見られたくない。
だってさ、私みたいな醜い人間、見たらみんな嫌な気持ちになるでしょ?
暗いし、話せないし、友達いないし、いつも考え込んで何も結局行動できないし、嫌いなんだ、自分なんて。
何度も否定してしまう。
そうして自分の顔を隠して、みんなから隠れて、少し安心する。
人と関わるとどう思われてるかいつも気にかけなきゃいけないんだもん。
1人でいれば、誰とも関わらなければ悩むことはないでしょ?
…でもさ、寂しさもあるんだよね。
それがもどかしい。
寂しさって人と関わりたいってことだから。
1人でいる事が嫌だってことだから。
人と関わると落ち込むって分かってるのに、そのままにはさせてくれないんだ、心のどこかが。
だから希望を持ってしまう。
いいのかな?希望を持って。
誰とも関わらないのは確かに楽なんだけど、なにも無いことは一種の幸せなことでもあるんだけど、求めてる心の奥の寂しさが浮き彫りになるんだ。
いつも一緒にいてくれなくてもいい。
少しでも優しい言葉を交わせればいい。
自分って存在を気にかけてくれればいい。
そんな気持ちが湧き上がってくるんだ。
私は帽子を少しだけ浅く被り直す。
そして、世界を見てみるんだ。
怖いけど、怖くてたまらないけど、私の求めている心の寂しさを埋めてくれる世界。
帽子はもしかして私の心の壁だったのかもしれない。
浅く被り直した事で、少しでも壁が崩れているといいなと思いながら、私はこわごわと1歩を踏み出したんだ。
題 小さい勇気
何も出来ないって思ってたけど、でもそんなことないよね。
私、今日前の人が落としたハンカチを拾ったの。
とっても感謝してくれた。
そしたら、心が少しだけふわっとした。
暖かくなった。
友達が悲しそうな顔してたから、迷惑かなって思ったけど、どうしたのって聞いてみたの。
そしたら、友人関係で悩んでるって教えてくれた。
一緒に解決方法を考えたら、すごく嬉しそうな顔で私に笑いかけてくれた。
ありがとう、声かけてくれて嬉しいって。
私の心はほわほわほわっと浮上して、更に軽くなった。
そして、じわじわっと心の芯から温まっていた。
何もしない、出来ない私のときもある。
どうしてもやりたくない時、気分じゃない時。
それも私だ。勇気が出ない時があったっていい。
私の心を大切にすることだって大事だ。
でも、勇気が出せた時。
その時に感じたふわふわもじんわりも私の気持ち。
行動した結果のギフトだ。
どんな時も私の元へ帰ってくる感情。
自分を大事にしても、人のこと思って優しく、大事にしても、どちらでもいい。
どちらも、勇気な気がする。
だから、出来ない自分を責めないでね。
そして、出来た自分を褒めてあげてね。
どちらも自分で決めたこと。
どちらも間違ってない。
どんな選択をしたとしても、それは私の勇気で、どちらも素晴らしい選択なんだから。