善悪の判断って難しい。
私たち高校で三人グループ、ずっと仲良かった。
でも、美奈子と、真由は割と意見の食い違いが多かった。
私はその度に仲をとりなしてたんだけど、結局美奈子と、真由は、離れてしまった。
美奈子は友達が沢山いたから、その友達といたし、そこに、私の共通の友人もいたから、そのグループにいさせてもらってけど、真由はもともと気が強く敬遠されていたから、一人で席にいることが多かった。
もちろん気になったし、話しかけたこともあったけど、裏切り者って言われて、拒絶された。
そしたら、何日か後、私と、美奈子が先生に呼ばれた。
「二人とも、真由を仲間外れにしてるらしいな」
ドキッとした。
私にも罪悪感があったから、先生の言葉が痛かった。
美奈子は先生に言い返す。
「違います。私と真由、意見が合わなくて、喧嘩が多いから一緒にいなかっただけです。花は真由に話しかけたけど、無視されたみたいだし」
先生の横にいる真由はうつむいている。
「そうなのか?でも、せっかく同じクラスのクラスメートになったんだから、話し合って、言い合いにならないように、考えてみたらどうだ?」
「だって・・・」
美奈子が言いかけた言葉を先生が遮る。
「いいか、これはいじめだぞ」
私はびっくりして先生の話を聞いていた。
これはいじめになるのかな・・・。
「いじめてるつもりは・・・」
美奈子がそう言うのを先生が言葉を重ねる。
「現に真由は教室で1人だ。今日も先生に相談してきたんだぞ」
「えっ」
私と美奈子は驚いて真由を見た。
気の強い真由が相談してくるなんて驚いたからだ。
もしかして、真由はけっこう精神的にストレスを感じていたのかもしれない。
いつも平気な顔してたけど・・・。
「じゃあ、仲直りしよう。ちゃんと喧嘩しないように話し合おうよ」
美奈子が声を和らげていった。
真由は静かに頷いた。
「よかったよかった、それじゃあ、ちゃんと話し合うんだぞ」
先生はホッとしたような顔で言う。
職員室を出た私達は、並んで歩く。
「仲直りしたいなら直接いえばよかったじゃん」
美奈子が真由に言う。
「言えたら苦労してないよ」
「まぁ、確かに。じゃあルール決めようね。また喧嘩するのやだしね」
2人で話して行ってしまうのを見ていた私は1人考える。
私達がしたことはいじめだったのかな?
私はいじめだと思わなかったけど、見る人が見ると悪だったのかな?
だとしたら、私は知らずに罪を犯していたことになる・・・。
それがこんなにも恐ろしい・・・。
私は今後、もっと自分の行動を振り返って考える必要があるな、と震える身体と共に実感していた。
題 流れ星に願いを
「あ、流れ星!」
私は空を指さした。会社の帰り、私の家に来ていた彼氏が窓に立つ私の横に並ぶ。
「どれ?あ、今日そういえば流星群が流れるとか言ってたな。流れ星、沢山流れるかもな」
私の横でそう言う彼氏に、私は期待を込めて空を見る。
「本当に?!じゃあ、ちゃんと見てないと、願い叶えてもらいたいし!」
「願い?何?」
彼氏が顔を近づけて来て、私はドキッとする。
「ちょっ、ちょっと、近い・・・。えーっとね、まず、今やってる仕事のプロジェクトが成功するように、でしょ。次に今年のボーナスが割増になりますように・・・・あとは・・・」
「ちょっと・・・」
彼氏が私の願いごとを聞いていたかと思えば、私の肩に手を置いた。
「仕事のことばかりだね、僕のことは?」
「え・・・」
私は思わず彼氏の顔を見る。
「あ・・・。もちろん願い・・・たいよ」
「何?」
微笑みながら近づく彼氏に私は動揺する。
「近いってば・・・」
彼氏は私のおでこに、彼のおでこをくっつけた。
間近にある顔にドキドキが止まらない。
「教えてよ」
「え、と、ずっと一緒にいられますようにって・・・」
私がドギマギしながら言うと、彼氏は魅惑的な瞳で私を見つめた。
「僕も流れ星にその願いをかけるよ」
そのまま惹き寄せられるように視線が外せなくなる。
私は催眠術にかかっているように瞳を閉じて、優しい彼氏からのキスを受け止めた。
流れ星、見れてないけど・・・。
今この瞬間に流れていたら、二人の願いを叶えてください・・・。
題 ルール
「絶対におかしい!」
私はクルッと彼氏を振り返って言った。
「何が?」
と涼し気な顔の彼氏。
「だってそうでしょ?家に帰ったら絶対に5分以内にメールして、メール返信も10分以内って変じゃない?そんな事してる人周りにいないんだけど」
「いや、別にそれだけ俺達の愛が強いってことなんだからいいじゃん」
「私は、けっこう負担なんだけど。いつも返せないし、返せないとネチネチ責めるしさ・・・」
恨みがましい目で彼氏を見ると、彼氏は動じることなく微笑んだ。
「だって、それは夏美がルール破るからだろ?」
「そういうルールを強要するのはおかしいよっ、私、楽しくない」
私が感情的に言うと、彼氏は顔を歪めた。
「楽しくないの?俺はいつでも夏美と連絡取りたいんだけど」
「もちろん、私もだよ。でも、ルールにするのは違うじゃん。それを出来なかったら責めるのも違うと思う!このままじゃ、私、あなたと付き合っていくの無理だと思う」
私ははっきりと私の気持ちを伝えた。
ずっと責められるたびに考えていたことなんだ。
彼氏は、驚いたような顔をしている。
「えっ?別れるってこと?」
「うん、こんなにルール縛りされるなら、別れたい」
「分かった!!もう言わないよ。ルールはなしにしよう。もう、夏美にこれしてとか言わないから、別れるとか言わないで・・・」
彼氏は、哀願するような口調と顔で言う。
彼氏のこんな必死な顔、初めて見た。
私は呆然と見ていたけど、いたずら心がわいて来る。
「どうしよっかな〜」
「頼むよ、別れるなんて嫌だ!」
泣きそうな顔で頼む彼氏に、可哀想な気持ちになる。
「わかったよ。じゃあ、ルールで縛らないこと!ちゃんと必要なルールなら、お互い納得してから決めようね」
「ああ・・・、分かった」
彼氏は私の手をギュッと握る。
「ありがとう・・・」
「ううん、分かってくれたならいいんだ」
話し合いができて良かったと思った。
彼氏が私の言葉を聞いてくれて、私を思っていてくれたことを確認できて良かった。
またルール縛りをするかどうかはこれからの彼氏の行動を見ようかなって思うけど・・・。
とりあえず、今は彼氏の言葉を信じてみようと思った。
題 今日の心模様
朝、好きな人に会えたんだ。
通学路で会って、おはようって挨拶したら、おはようって言ってくれた。
そこまで仲良くなってないし、友達と話してたから、そのまま登校しちゃったけど・・・。
凄くいい気持ちで教室に入ったら、先生が教室の前で待ち構えてたんだ。
職員室に連れて行かれて、数学のテストがクラスで最低点だって言われた。
・・・仕方ない。
だってあの日、前日に好きな人が他の女子と仲良くしてるの見ちゃったんだもの。
後でただの友達ってわかったけど、そのせいで、眠れないままテスト受けたんだ。
点数取れるわけない・・・半分夢の中だったんだから。
そんなわけで、先生に補習を言い渡されて落ち込んで教室に戻ると、私の席に友達が座ってた。
「呼び出しくらってたの?」
友人に言われて、私はヘコミながら頷く。
「うん、補習だって・・・」
「そっかぁ、でも、落ち込まないで、こないだ言ってたコンサートのチケット取れたから」
「えっ!本当?!」
私の大好きな歌手のコンサートで、ほぼ取れたことがない。
私と友人で頑張って連日取ってたんだけど、私の方は全然ダメだった。
「ありがとっ!神ッ!!」
私が友人に抱きつくと、
「ちょっとやめてよ、暑苦しい・・・」
と言われる。
でも、そんなこと気にならない、最高の一日!
そして、放課後地獄の補習を受けて帰宅途中、今日はどんな一日だったんだろう・・・と振り返る。
なんだか、上がったり下がったり疲れたなぁ・・・
今日の心模様を一言で現すとジェットコースター、かな?
題 たとえまちがいだったとしても
「好き」
私は隣の席の優吾に言う。
「う〜ん、分かった分かった」
優吾は私の言葉を聞いているのかどうなのか、自分の席で、ノートをカバンから取り出した。
「昨日宿題できてなかったから、今しなきゃ」
優吾が教科書を開いて勉強しようとしている所を私はトゲのある言葉で重ねて話す。
「好きだってば」
「分かってる」
優吾はこちらを見もせずに、ノートの宿題に一心不乱に取り組んでいる。
「ちょっと、ひどすぎない?」
私の言葉に、優吾は面倒そうに返答した。
「いや、だって何回言うんだよ?俺は今宿題やってるの目に入らない?今日だけでその言葉十回以上聞いたんだけど」
「だってそれは・・・好きだから、伝えたいんだもん」
私の言葉に、優吾はこちらをちらっと見た。
「本当に俺が好きなら今放っといてくれる?」
優吾の態度と言葉に、私は少しへこんだ。
「・・・ねえ」
「・・・何?」
少しして、私は優吾に話しかける。
少し間があって、優吾からの返答がある。
「優吾は私のこと好きになってくれないの?こんなに毎日言ってるんだから」
「言われすぎると逆効果だって聞いたことない?」
優吾は手を止めると、私の方を見た。
「でも、どうしたら好きになってくれるのかわからないんだもん」
私は、戸惑ってしまって優吾に打ち明ける。
好きな人に打ち明けることでもない気がするけど。
「しつこくしなきゃいいんだよ?」
優吾は再びノートへと顔を戻した。
「そしたら、万が一でも好きになってくれる?」
「まあ、万が一っていうなら、可能性あるよ。しつこくしないなら」
上の空のような優吾の言葉に、私の気持ちは舞い上がる。
「ありがとう!私、頑張るね!!」
私が弾んだ声で優吾に笑いかけると、優吾はギョッとした顔で私の顔を見る。
「え、何を頑張るんだよ、万一って話だろ・・・」
「だめだよ、間違いだったって言っても許さないから!私、これからしつこくしないから、私を好きになってね!」
「もうしつこいじゃん・・・」
何か優吾が言っている気がするけど私の耳には入ってこない。
私は明日からどうやってしつこくしないようにしようか、頭を目まぐるしく働かせていた。