題 もっと知りたい
あなたのこともっと知りたい
好きなのに、何も知らない。
違うクラスだから、あなたの性格も分からない。
何色が好きなのか、どんな食べ物が好みなのか、どんなタイプの女の子が好きなのか。
質問したいことは沢山あるけれど・・・。
それでも、私は話しかける勇気すらなくて。
ここでこうしてあなたの通り過ぎる姿を見ているだけ。
廊下で掲示物を見ているふりをしながら
あなたを横目で見ているだけなんだ。
もっと近づきたいから
ここで動かない重い一歩を踏み出したい。
あなたへ声をかけられるように。
そしてよりあなたを深く知るための一歩を。
踏み出したい。
「あのっ!!」
そうして、話しかけた後はもう進むだけだ。
後戻りは決してできないから。
題 平穏な日常
何も起こらないのが一番・・・なのに
「あーちょっと・・・りんちゃん、犬が逃げたぁ!」
私の横に住んでる幼い頃からの幼馴染は、私に平穏をもたらしてくれたことがない。
「分かった!」
慣れている私は直ぐに手綱をキャッチすると、波香に渡す。
「もう、手に手綱をぐるぐるまきにしといてよ!」
波香は涙目で私にありがとうと言いながら頷いている。
こんな調子で毎日私は振り回されまくっている。
そして今の悩みは・・・
「それでね!陽斗くんがその時こう言ってくれたんだよ・・・」
「・・・あのさぁ。私勉強中なんだけど」
私が思い切り宿題してても隣に住んでいる特権を利用して構わず上がり込んでくる。
そして、彼氏ののろけを聞かされる。
はぁーと思わずため息をついてしまう。
「何?宿題なんてあったっけ?」
波香は首をかしげて甘えたような表情で私を見る。
私と同じクラスの波香は、きっと100問漢字テストの存在なんて、頭から消えているに違いない。
彼氏のことで頭が一杯なんだろう。
「明日ある100問漢字テストの勉強だけど」
私が言うと、波香、「ああああーーー!」と奇声を上げる。
「陽斗くん勉強しなきゃとか言ってたのそれかぁ。どーしよっどーしよっりんちゃん!」
「ハルトくんも勉強してるんだし、波香も勉強すれば?」
私の返答に、波香は涙目になる。
「無理だよお」
「いや、そんな事言われても私も無理なんだけど」
漢字を書いている右手を掴まれて、ゆさゆさ揺らされ、私は再びため息をつきながら言う。
「・・・もう、仕方ないな、教えてあげるから家からプリント持ってきなよ」
「ありがとっ、りんちゃん」
波香は素早く私の部屋を出ていく。
これから、波香に漢字も教えるのか・・・。
まぁ、私は3日前からちゃんとコツコツやってたからほぼ完璧なんだけど・・・。
それにしても・・・。
私は波香が出ていった扉を見て首を振る。
私の平穏な日常は、一体いつ訪れるんだろうか。
題 愛と平和
私は平和を愛してる。
だから言い争いとかケンカが嫌いだ。
でも、彼氏は喧嘩好き。
直ぐに人に突っかかっていく。
どうしてそんなカッカするの?
と聞いても、そんなの知らない、と言う。
私は疲れる。
平和がいいから喧嘩をやめてよと言う。
彼氏は好きだけど、暴力で解決してもいいことは何もないと思うから。
そうすると彼氏は怒る。
俺のやることに文句つけるな、と。
そうして私はイライラして言い返す。
私の事も考えてよって。
だんだんヒートアップしていく言い争い。
平和ってなんだっけ?
私は平和がいいのに、何だかいつも平和じゃない
その事に悲しみを覚えるけど彼氏のことを愛してる。
解決したいのに出来ないから。
私は今日も彼氏のことを止めてしまう。
平和な時間を夢見ながら。
題 過ぎ去った日々
時はあっという間に過ぎ去っていく。
彼に告白されて付き合って
沢山楽しく過ごしてた
それでも別れの時がやってくる。
どうしてだろう。あんなに楽しかったはずなのに
今は側にいるのが居心地悪くて。
話すだけでお互いをお互いがトゲで刺す。
出会った頃のように時間を忘れるくらい
楽しい会話なんてどこにもない、
だから私達は別れを選択するしかなかった。
一緒にいても幸せじゃないと感じたから。
もしどこかの選択肢が違っていれば
私の彼への想いがもっと強ければ
私達はまだ笑顔で過ごせていただろうか。
こんな風に一緒にいることすら嫌な関係には
ならなかったんだろうか。
彼にそんな問いかけを出来ないくらい
険悪な空気にため息をつく。
さよなら、と別れの言葉を告げて
決してやり直しの出来ない関係は
簡単に壊れてしまったんだ
振り返る事もなくあの日の幸せな片鱗は崩れ落ちて
私達はそれぞれ、いつもの日常に戻っていくんだ
題 お金より大事なもの
大事なの、あなたのことが。
だから、絶対に誰にも譲らない
私は豊を見てそう考えていた。
頑張って頑張って付き合ってもらえた彼氏。
だからこそ、誰が奪いに来たとしても死守するよ。
「どうしたの?」
甘やかな優しい声で言う豊。
黒髪はつややか、甘い端正な顔つき、スラリとしたスタイル。
私と付き合ってもらえたなんて未だに信じられなくて。
私だって頑張って自分を磨いて、磨いて沢山頑張ったけど。
それでも、あなたに手が届くとは思ってなかった。
「ううん、豊っていつ見ても素敵だなって」
私はニコッと笑ってそう言う。
「ありがとう。君もきれいだよ」
豊は私に美しい顔で囁くように言う。
それだけで、私は天にも昇る心地だ。
「豊、私あなたのこと一億で諦めてって言っても諦めないよ。100億でも、100兆でも諦めない」
「君にそう言われると嬉しいな」
豊は、私の手に自分の手を重ねた。
「僕も、君のこと、何億積まれても諦めたりしないよ」
「あ・・・うん・・・」
いざ、自分が言われると、破壊力が凄い。
豊の美しい顔を見ながら、私はくらくらとめまいを覚える。
「君と付き合えて、僕は幸運だよ」
「豊っ、もうそれ以上言わないでっ」
私は言葉の破壊力にダメージを受けて懇願する。
「私が豊の言葉に弱いの知ってるでしょ・・・」
上目遣いで豊を見ると、彼はフフッと笑って微かに首を傾げた。
「知ってるけど、君の反応見るのが好きだから」
私の顔が一気に真っ赤になる。
ちょっと意地悪な所も大好きだ。
負けっぱなしだなぁ。
恋愛に勝ち負けはないかもだけど、豊には一生勝てる気がしないと思ってしまった。
ニコニコと笑いかける豊を見ていると自然と私も笑みがこぼれる。
負けてもいいや。
そう思って、顔を上げると私は彼の大好きな顔を心ゆくまで鑑賞したのだった。