題 平穏な日常
何も起こらないのが一番・・・なのに
「あーちょっと・・・りんちゃん、犬が逃げたぁ!」
私の横に住んでる幼い頃からの幼馴染は、私に平穏をもたらしてくれたことがない。
「分かった!」
慣れている私は直ぐに手綱をキャッチすると、波香に渡す。
「もう、手に手綱をぐるぐるまきにしといてよ!」
波香は涙目で私にありがとうと言いながら頷いている。
こんな調子で毎日私は振り回されまくっている。
そして今の悩みは・・・
「それでね!陽斗くんがその時こう言ってくれたんだよ・・・」
「・・・あのさぁ。私勉強中なんだけど」
私が思い切り宿題してても隣に住んでいる特権を利用して構わず上がり込んでくる。
そして、彼氏ののろけを聞かされる。
はぁーと思わずため息をついてしまう。
「何?宿題なんてあったっけ?」
波香は首をかしげて甘えたような表情で私を見る。
私と同じクラスの波香は、きっと100問漢字テストの存在なんて、頭から消えているに違いない。
彼氏のことで頭が一杯なんだろう。
「明日ある100問漢字テストの勉強だけど」
私が言うと、波香、「ああああーーー!」と奇声を上げる。
「陽斗くん勉強しなきゃとか言ってたのそれかぁ。どーしよっどーしよっりんちゃん!」
「ハルトくんも勉強してるんだし、波香も勉強すれば?」
私の返答に、波香は涙目になる。
「無理だよお」
「いや、そんな事言われても私も無理なんだけど」
漢字を書いている右手を掴まれて、ゆさゆさ揺らされ、私は再びため息をつきながら言う。
「・・・もう、仕方ないな、教えてあげるから家からプリント持ってきなよ」
「ありがとっ、りんちゃん」
波香は素早く私の部屋を出ていく。
これから、波香に漢字も教えるのか・・・。
まぁ、私は3日前からちゃんとコツコツやってたからほぼ完璧なんだけど・・・。
それにしても・・・。
私は波香が出ていった扉を見て首を振る。
私の平穏な日常は、一体いつ訪れるんだろうか。
3/11/2024, 11:35:46 AM