ミントチョコ

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1/31/2024, 11:16:12 AM

もう少しでたどり着く!

私はゼイゼイ言いながら山頂への道を目指していた。

なぜ運動音痴な私がこんなに頑張って山に登っているかというと・・・。

「ほら、頑張れ」

恋人の会社の先輩に山登りに誘われたからだ。
恋人に嫌われたくなかった私は、二つ返事でオッケーして、山登りの準備を即席でネットで調べて必要な物をネットショップでそろえたのだ。

でも・・・実は私は超インドア派。

家にいるのが趣味、あ、昼寝、ゲームも好きな家を愛してる女だ。

本当は、先輩の誘いじゃなければ断っていただろう。

土日で泊まりで行くことになり、ドキドキしながら臨んだ当日。

日頃の運動不足で1日目はあえなくホテルについてすぐ疲労で泥のように眠ってしまった。

2日目は、1日目の筋肉痛も加味されて、もう私はボロボロになりながら山頂までの苦行を強いられていた。

先輩が話しかけてくれてたけど、もう、それに答えるのもしんどくて・・・。
山頂の案内が見えてきた時には長い旅路をようやく乗り越えて到着したような希望に溢れていた。

「もうすぐ山頂だぞ、頑張ろう」

先輩の声に頷く。
最後の力を振り絞って登り切ると、そこからの景色に言葉を、失う。

「あ・・・」

雲が一面眼下に広がっている。雲の間から緑の森がずっと向こうまで連なっている。

上を見ると空をとても近くに感じて、間近に迫っているように見える。

下も上も雲に挟まれていて、まるで空中にいるかのような錯覚を抱く。

「すっごい・・・!」

「だろ?」

私が感嘆の声を上げると、先輩は、得意そうな声を上げた。

「俺はこの景色を見るために登っているといってもいい」

「そっかぁ。この景色を見ちゃうと、確かに・・・あっ」

私は同意しかけていると、足に限界がきてふらつく。

「大丈夫か?」

すぐに先輩が来て私を抱きとめ、支えてくれた。

「はい・・・」

私は先輩を見上げると、先輩は私の顔を見て、複雑な表情をしている。

「どうしたんですか?」

「ごめんな。本当は君があまり山登りとか好きじゃないって分かってたんだ。だけど、どうしても俺の好きな景色を見せたくて、ワガママ言ってしまった」

私は先輩の頬をなでた。

「いいんです。えと、またすぐ来れるかというと・・・何年後かとかなら行けるかもですが・・・。でも、今は、先輩と山頂の景色を見ることが出来て嬉しいです」

私が上を見上げて先輩の顔を見て告げると、先輩は、顔を下ろして私にキスをした。

「好きだよ」

いきなり言われて心拍数が急上昇する私。

そんな私の姿を見て、先輩はいたずらっぽく笑う。

「さぁ、下山が待ってるから、もう少し頑張ろうな」

そう言うと、私に手を差し伸べる。

「そ、そうでした〜!!」

登ったら終わりじゃなかった!
私はこの先の長い旅路を思うと絶望感を感じながら、
それでも、愛しい人と降りれるなら頑張れる、と先輩の差し出した手に自分の手を重ねたのだった。

1/30/2024, 11:49:36 AM

これ、どうやって届けようかなぁ。

校舎で拾ってしまった私の片思いの相手のハンカチ。
名前とクラスがきっちり書いてある。

なぜ拾ってしまったんだろう。
ラッキーだろうって?
いや、話したことない人だもの。

違うクラスの一目惚れした男の子。

見るだけでドキドキしてるのに。
よりによってハンカチを届けるミッションが発生してしまった。

どうしよう
どうしよう

心の中でさっきからずっと叫んでいる。

私、全然心の準備してないから、このまま男の子のクラスに行ける気がしない。
ましてや話しかけるなんて。
勇気が全く出てこない。

かといって、このままここにハンカチ置いとくのも悪いと思うし、私も嫌だし。

忘れ物置き場に置く?

気づくかな、早く届けてあげたいよね。

私がその場でウロウロしてると、同じクラスの友達が声をかけてきた。

「何一人で行ったり来たりしてるの?相変わらず面白いね」

「美紀、良いところに!」

もうこの際、誰でもいい。

「このハンカチ、真島くんのクラスに行って届けてくれる?」

「真島?あ、A組だね、志穂が行ってくれば?」

そう言われて即座に首をブンブンの横に振る。

「無理だよ、美紀知ってるでしょ?私が真島くんのこと好きなこと。無理。ドキドキしすぎて死んじゃう」

「いやいや、死なないから。私だって届けるのやだよ。A組遠いし」

「お願い〜助けると思って」

「チャンスじゃない、この機会を逃さず仲良くしたら?」

美紀の非情な言葉。

「そんなレベルじゃないんだってー。真島くんの前では固まっちゃうんだってばー」

「じゃあいつまでも片思いでいいの?」

呆れたように言う美紀。

「いいよっ、私は彼を揺らがずずっと好きでいた自分を誇るよっ!」

私の言葉を聞いて、

「だめだ、こりゃ」

とため息をつく美紀。

そこへ・・・。

「あの、この辺でハンカチ落ちてなかった?」

声に振り向くと、そこには話題の主の真島くんが立っていた。

「あっ!あっ、まっ」

ことばにならない私を見て、美紀が答える。

「あるよー、志穂が持ってる」

そして、私を指さした。

「ごめん、この辺でジュース買おうと小銭取り出したひょうしに落としたみたい、ありがと」

真島くんの整った顔を間近に見て、わたしはこくこくと機械人形のように首を縦に振ることしかできない。

そして、手に真島くんのハンカチを置いて差し出した。

「ありがとう。拾ってくれてて助かったよ」

笑顔で私の手からハンカチを受け取る真島くん。

「じゃあ」

そう言って去っていく真島くんをボーッと見ていた私は、我に返ると、美紀に訴える。

「見た?見た?尊いよね〜!かっこいいし、優しい。この世のものとは思えないよ〜」

「もはやそれって恋っていうか推し活では・・・」

美紀はさっきから呆れ顔だ。

「もう、真島くんが触れた手は洗いたくない〜!」

「なに馬鹿な事言ってるの!汚いから洗いなさいよ」

そんな美紀の叱り声を聞きながら、私は真島くんにハンカチを届けるミッションが成功して、満足感で一杯だった。

1/29/2024, 12:18:56 PM

心の中でいつも言ってる。
でも言葉には出来ない。

恋人になったのに素直になれない私。

「ちょっと、昨日連絡くれなかったじゃない?なんでよ?」

昼休み、違うクラスの私と彼は中庭で待ち合わせてご飯を食べる。
昼食を持って中庭に来た私は、彼の顔を認識した途端、きつい口調で彼にくってかかっていた。

「仕方ないだろ。昨日は部活遅くて、そのまま家帰って宿題してたら睡魔に襲われたんだから。朝びびったのなんの。慌ててシャワーして学校来て宿題してたんだぞ」

そう聞くと、部活大変だったんだな、とちらっと同情の気持ちが湧くものの、私の口からは気持ちとはうらはらな言葉が出ている。

「だからって大事な彼女に一言連絡あってもいいじゃん?昨日、電話しようって言ってたから待ってたんだよ」

私だって、部活まあまあ遅かったけど、家帰ってからずっと彼氏との電話を楽しみに待ってたのに。

でも、彼氏は、そこまで私のこと思ってくれなかったんだなという思考になってしまう。

もともと友達だった私達は、付き合った後もいまいち甘い雰囲気になり切れない気がしてる。

「まぁ、それは・・・悪かったよ。昨日の宿題、あり得ない位出てて、終わらせないとって結構焦っててさ」

言い訳のように聞こえてしまって、私の機嫌はなかなか治らない。

「私って、あんたの何?友達なの?友達ならしょーがないよねっ、別に連絡忘れても謝ればいいもんねっ」

言いながら、可愛くないな、と思う、自分のこと。
でも、本当に大事に思われてるかなという不安が心を占めていて・・・。

「友達・・・だよ」

「え?」

彼氏の言葉にドクっと心臓が爆音を上げる。
友達?に戻りたいってこと?

パニックになって青ざめる私に気づかず、彼氏は私を見る。

「友達だし、親友だし、恋人だよ。だからこそ甘えちゃったよな。ごめん、お前のことだから待っててくれたんだろ?」

私の頬に自分の手をあてて、私にいたわるような視線を向けてくる彼氏。
急にそんな顔を向けられて、私はこみ上げてくる涙を抑えられなかった。

「泣くなって」

彼氏が私を抱きしめる。

だって、不意にそんな優しいこと言われたら。
どうしていいか分からなくなる。

「今日は絶対電話するから待ってて」

優しく背中をさすりながら言ってくれる彼氏に、私はただ頷く事しか出来ない。

愛してる。

やっぱりあなたを愛してる

言葉にはなかなか出来ないけれど、無限のI love youは、私の心にいつも渦巻いているんだよ。

1/28/2024, 11:48:58 AM

街へ行きたい。

今日は休日。
いつもは家と職場の往復だから、見慣れた景色しか見られない。

だけど、今日は久しぶりのお休み。
いつもは足を伸ばせない街へ行くんだ!

彼と街でデート。
朝目覚めた時からウキウキで、幸せに包まれて起きた。
楽しみすぎて、早く起きすぎたせいでご飯ものんびり食べられた。
メイクして、服を選んで、持って行く物を整理して・・・。

1日を思ってため息をつかなくていいから、こんな日は、本当に幸せだって思う。

今日はどこに行こうかな、と考える。

会ってから決めようね!と話していて、彼氏も、どこ行こうか?と楽しそうだった。

お互い忙しくてなかなか会えなかったから、余計にワクワク感が膨らんでいる。

街に行ったら、まずはカフェがいいかな?水族館もあるし、映画でもいいな。
美術館っていうのも楽しいよね・・・。
ちょっと遠出してテーマパークっていう手も・・・。
彼氏が行きたい場所を聞くのも楽しみだな♪

鼻歌を歌いながら、家の電気を消して、靴を履いて、家を出る。

会社を出るときとはえらい違いだな、と苦笑しながら。

「行って来ます!」

私の弾んだ声と共に、パタリ、とドアが閉まり、カチャリと鍵がかかった音が部屋に響いた。

1/27/2024, 11:40:15 AM

「何でそんな事言うの?」

私はクラスメートの高瀬に言い放った。

高瀬が私に対して余計な事するなと言ったから。

友達が町田くんのこと好きだから、町田くんの好きなタイプを聞き出そうとしただけなのに。

「やめとけって。そんなの、聞いた所で、好みじゃなかったらどうすんだよ?本人が聞くならまだしも、お前部外者じゃん」

「ちゃんと、優子には町田くんに聞いていいって言ったよ。いいよっていってたもん」

高瀬のトゲのある言葉に思わずムキになってしまう私。

せっかく友達の恋愛に協力しようとしてるのに、何でこんな風に否定されるのか分らない。

「本当にやめとけって、分からないやつだな」

イライラした口調になる高瀬。

「高瀬に聞いた私が馬鹿だった!もういいっ」

「あ、おいっ・・・」

私は高瀬の言葉を振り切り、町田くんのクラスへ向かう。

丁度お昼休み。

他クラスで、人数もまばらだ。

「あ、菜由!」

知り合いを見つけて、声を掛ける。

「おー、楓、どうしたの?」

菜由が笑顔で駆け寄ってくる。

「町田くん、いない?」

「町田くん?あー、今いないよぉ」

にやにやして話す菜由。

「最近同じクラスの井川さんと付き合い初めて、多分どっかで2人でご飯じゃないかなぁ?」

菜由の言葉に、私の顔から血の気がサーッと引いた。

「えっ、彼女、出来たの?町田くん」

「うん、最近ね、ラブラブだよ♪」

私はフラフラと、ありがと、、、とクラスを離れると、自分のクラスへと戻る。

私のクラスの扉の所に高瀬がもたれて待っていた。

「言ったろ?やめとけって」

「うん・・・余計な事しなきゃ良かった・・・優子に何て言ったらいいんだろ・・・」

あんなに嬉しそうに毎日町田くんの話を聞かされていたのに。

こんな残酷な現実をつきつけなきゃいけないなんて・・・。

私の涙目になる目を見て、高瀬は、私の肩を軽く叩いた。

「言わなくても良いんじゃないか?いずれ分かるだろうし。言うか言わないかは楓次第だけど」

「うん・・・余計悩みが増えてしまったよ・・・高瀬は知ってたんだね?このこと・・・」

「まぁ・・・町田は、同じサッカー部で、彼女の話してたからな」

そっか・・・

私を止めたのは、高瀬なりの優しさだったんだ・・・

「ありがと、止めてくれて、なのにごめんね、突っ走っちゃって」

私は絶望的な気持ちで謝る。

「楓らしいじゃん。人の為に頑張る所。でも、これにこりたら、恋愛の事に首を突っ込むなよ」

高瀬は優しい笑みで言う。

ううー。本当に私は馬鹿だった、でも聞いてしまったことはどうにもならない。

私は優子にどう告げようか悩みながら、高瀬に向かって神妙に頷いたのだった。

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