ミントチョコ

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これ、どうやって届けようかなぁ。

校舎で拾ってしまった私の片思いの相手のハンカチ。
名前とクラスがきっちり書いてある。

なぜ拾ってしまったんだろう。
ラッキーだろうって?
いや、話したことない人だもの。

違うクラスの一目惚れした男の子。

見るだけでドキドキしてるのに。
よりによってハンカチを届けるミッションが発生してしまった。

どうしよう
どうしよう

心の中でさっきからずっと叫んでいる。

私、全然心の準備してないから、このまま男の子のクラスに行ける気がしない。
ましてや話しかけるなんて。
勇気が全く出てこない。

かといって、このままここにハンカチ置いとくのも悪いと思うし、私も嫌だし。

忘れ物置き場に置く?

気づくかな、早く届けてあげたいよね。

私がその場でウロウロしてると、同じクラスの友達が声をかけてきた。

「何一人で行ったり来たりしてるの?相変わらず面白いね」

「美紀、良いところに!」

もうこの際、誰でもいい。

「このハンカチ、真島くんのクラスに行って届けてくれる?」

「真島?あ、A組だね、志穂が行ってくれば?」

そう言われて即座に首をブンブンの横に振る。

「無理だよ、美紀知ってるでしょ?私が真島くんのこと好きなこと。無理。ドキドキしすぎて死んじゃう」

「いやいや、死なないから。私だって届けるのやだよ。A組遠いし」

「お願い〜助けると思って」

「チャンスじゃない、この機会を逃さず仲良くしたら?」

美紀の非情な言葉。

「そんなレベルじゃないんだってー。真島くんの前では固まっちゃうんだってばー」

「じゃあいつまでも片思いでいいの?」

呆れたように言う美紀。

「いいよっ、私は彼を揺らがずずっと好きでいた自分を誇るよっ!」

私の言葉を聞いて、

「だめだ、こりゃ」

とため息をつく美紀。

そこへ・・・。

「あの、この辺でハンカチ落ちてなかった?」

声に振り向くと、そこには話題の主の真島くんが立っていた。

「あっ!あっ、まっ」

ことばにならない私を見て、美紀が答える。

「あるよー、志穂が持ってる」

そして、私を指さした。

「ごめん、この辺でジュース買おうと小銭取り出したひょうしに落としたみたい、ありがと」

真島くんの整った顔を間近に見て、わたしはこくこくと機械人形のように首を縦に振ることしかできない。

そして、手に真島くんのハンカチを置いて差し出した。

「ありがとう。拾ってくれてて助かったよ」

笑顔で私の手からハンカチを受け取る真島くん。

「じゃあ」

そう言って去っていく真島くんをボーッと見ていた私は、我に返ると、美紀に訴える。

「見た?見た?尊いよね〜!かっこいいし、優しい。この世のものとは思えないよ〜」

「もはやそれって恋っていうか推し活では・・・」

美紀はさっきから呆れ顔だ。

「もう、真島くんが触れた手は洗いたくない〜!」

「なに馬鹿な事言ってるの!汚いから洗いなさいよ」

そんな美紀の叱り声を聞きながら、私は真島くんにハンカチを届けるミッションが成功して、満足感で一杯だった。

1/30/2024, 11:49:36 AM