「幸せって何だろーね」
学校で私が友達と雑談中ポツリと呟くと、友達は不可解なモノでも見るような顔をして私を見る。
「どうしたの?いきなり」
「うーん、何か、この国に産まれて、住むとこも勉強の環境も整ってて、食べるものもあって、あまり不快を感じることがないのね、私。だからそれが幸せなのかなーって」
「そうだよね、こうしてただ、当たり前にあって気付けないものって意外とあるのかもね・・・」
友達が、感心したように私に言った。
「うん、恵まれてるんだよ。でも、こう幸せだなーって実感もなくて。幸せなのかな、幸せなんだよね、きっとって自分を、言い聞かせてる気がする」
私の言葉に友達が、同意する。
「わかる気がする。まあ、私は、何か落ち込むことがあってこその幸せかな、とは思うよ。ずっと幸せなら、幸せしか知らないことになって、不幸が分からないから、幸せの有難みも分からないって何かで読んだな〜」
友達の言葉に妙に納得する私。
「そっかー、じゃあ、私がこうして、何か落ち込んだり、悩んだりすることにも意味はあったんだね」
「そーだよ、沢山考えるといいよ」
友達にくしゃくしゃ、と髪を撫でられる。
「ちょっとー髪がぁ!」
私の抗議の手を素早くよける友達。
二人でこうしている時間も案外幸せなのかもしれない。
新年の地震、とても驚きましたし、心も痛みました。
皆さんの無事を心からお祈りしています。
寒い日が続いているので、体調にはどうぞ気をつけて下さい。
「大晦日ねぇ、紅白見ましょうか!」
お母さんの弾んだ声。
テレビのリモコンをオンにするお父さん。
机の上には豪華なオードブルと年越し蕎麦と、ケーキ、乾杯用のジュースも揃ってる。
「はーい」
と言いながら、本当は好きな配信者のYouTube配信見たいのにな、と内心思う私。
だけど、たまにの大晦日。今日は家族と過ごすとするか。
小学校の弟が、はしゃいで家族全員のグラスに飲み物を注いでいる。
紅白の歌を聞きながら、家族揃ってグラスを持ち上げる。
お父さんが乾杯の音頭をとる。
「えー、今年も1年お疲れ様でした。掃除もみんな頑張ってくれたので、とっても綺麗になりました。また来年も、健康で、仲よく暮らしましょう!乾杯!」
「乾杯〜!」
チンっ
グラスを弟と両親と軽く合わせる。
中に入っている透明なサイダーがゆらっと揺れる。
「おかーさん!もう食べてもいい?」
弟が、ご馳走に待ちきれなくなったらしくお母さんに聞いている。
「いいよー、沢山たべてね。お父さんと二人の好きなもの沢山買ってきたから」
お母さんがニコニコしながら私と弟を見て言う。
「やった!ありがとう、お母さん」
私と弟は早速ご馳走を取り箸で各々取り出す。
いつもは全員揃うことのない食卓。
四人でわいわい賑やかにご馳走を食べる私は、やっぱり1年のこの、四人で年を越す大晦日が好きだ。
家族三人の顔を見回しながら思う。
今年も1年、ありがとう、来年も、よろしくね!
「1年間いろいろあったなあ」
12月31日
私は机に座って、日記を書く手を止めて、1年間の回想をしていた。
高校の入学式で、緊張したこと。
5月の体育祭で、実行委員をやることになって、友達がとても増えたこと。
友達が出来て賑やかな7月、花火やお祭りに行って楽しかったこと。
9月になって、実行委員仲間の一人が気になって仕方なかったこと。
10月、修学旅行、気になっている男の子と一緒の班になって、沢山話したこと。
11月、思い切って告白すると、好きって言ってもらえて、幸せの有頂天だったこと。
そして、12月、クリスマスに、初彼氏と一緒に過ごした。
一緒にカフェに行って、水族館に行って、楽しかったなぁ。
そう回想していると、私の携帯がメールの着信音を告げる。
「何してた?早く会いたいな。今年はありがとう、来年も、よろしく!」
彼氏からのメールの文に私の顔は綻ぶ。
こうして大事な人がいることがとても嬉しくて、ずっとずっとこれからも一緒にいたいと思った。
私は返信画面を開いたまま、どう返そうかな、と口がニヤけるのを止められずに、返信文を打ちだした。
こたつに入ってくつろぐ私は、卓上に置いてある丸い入れ物に入ったみかんを見る。
「一つ食べちゃおーっと」
それを見ていた妹が釘をさすように言う。
「あーまた。私が見てるだけでもお姉ちゃん、今日3個はみかんを食べてるよ?太るよ」
横でこたつに入って読書している妹にイーッとしてやる。
「いいんだもんっみかんは低カロリーだし、それに・・・」
ほこほこしたこたつの中にいると、条件反射的にみかんに手が伸びちゃうんだから。
「ふーん、ミカン人間になっても知らないから!」
そう言うと、妹は、本をパタリと閉じて、リビングを出ていく。
「なによーミカン人間ってー!」
私は妹が消えた後に呼びかけるが、返答はない。
「さてと」
邪魔者が消えた所でみかんの皮をむく。
甘酸っぱい匂いが鼻をくすぐる。みかんの皮をむいて行くと、甘酸っぱい果実が姿を現して、期待が沸いてくる。
三日月型のみかんのフォルムも可愛いと思う。
薄皮を取って口に入れると、みかんの果肉が口の中一杯に広がって幸せだ。
こたつの暖かさも幸せの相乗効果になっている。
「うーん、やっぱり冬はみかんに限るよね〜!」
私は誰もいないリビングで、頬に片手を当てて思わず叫んでいた。