もしも明日世界が終わるなら
貴方が好きだとぶちまけよう
貴方に何一つ届かなくても
それでも良い
それからきっと
変わり映えのない今日を過ごすだろう
終わり行く世界をひとりで惜しんで
ここに貴方がいたならと
いつも通り願うのだろう
[明日世界が終わるなら……]
見知らぬ私の両腕も
君を傷つけはしないのだと
何一つ疑うことなく
君は私の肩に頭を寄せて身体を預けた
あの衝撃を君はきっと知らない
君を害する人が何処にも居ないと
君が無条件で無防備に知っていること
誰もが君を愛しいと慈しむと信じていること
愛されていると理解していること
世界が君に優しいものだけではないと
いつか君は知るかもしれない
因果が無くとも疎まれることがあると
いつか君は理解するかもしれない
そんな日が永遠に来なければ良いと祈った
[君と出逢って]
押し当てた貝殻から
鳴り響く潮騒
遠くから
とても遠くから
聞こえるざわめき
足の指から逃げて行く砂
じりじりと肌を焼く太陽
潜り込んだ水の冷たさ
水平線近くを横切るヨットの帆
貝殻が切り取った遠い夏の記憶
[耳を澄ますと]
二人だけの秘密ね
小指を立てて
ちゃめっ気たっぷりに
微笑む目尻に刻み込まれた
深い笑い皺
日に焼けていない
つきたてのお餅のように
弛んだ柔らかな二の腕
血管の目立つ手の甲
薬指に光るアメジスト
あの秘密がなんだったのか
もうすっかり忘れてしまった
あなたの声だって
もう思い出せない
二度と増えない二人だけの秘密
[二人だけの秘密]
貴方がくれた優しさを
何度も何度も
取り出しては眺めている
これだけじゃ足りないと
両手両足で駄々をこねて
泣き叫べる程子供では無くて
これだけあれば十分と
満ち足りた微笑みで
呑み込める程大人にも成れない
貴方のその優しさはあまりに易しく
息詰まらせて生き詰まらせる
分かっているのに
気まぐれに貴方がくれた優しさを
何度も何度も
思い出しては抱きしめる
掌中の珠のように
そうして生きて逝くのだ
貴方のくれた
優しさだけで、きっと
[優しさだけで、きっと]