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7/8/2025, 1:26:51 AM

 
 「なんで私が振られなきゃなんないの?連絡だってす
 ぐ返したし、何か貸してって言われたら嫌な顔せずに
 貸してあげたし、こんなにも尽くしてきたのに…どう
 して…?」
 「それが相手にとっては重かったんじゃない?ただ相
 性が合わなかっただけだよ。」
 「え?!私って重かったんだ…。」
 「いや、そういうことじゃなくて、相手にとってって
 いう…」
 「うわーん、こんなんで重いとか言われたら無理だ
 よ!もう恋愛なんてできないー!」
 
 失恋するといつもこうなる友人は少し面倒だ。でもこ 
んなことを言いながら1ヶ月以内にはもう新しい彼氏を作っている。

 「はぁ、恋愛できないっていいながらすごいペースで
 してるけどね…。」
 「今回はホントのホントにできないもん。」
 「できるできる。」
 「できないから!」
 「何よ、今日は一段と面倒くさいな…。」
 「面倒くさい女で悪かったねー!」
 「あっ、ごめんごめん。だって私恋愛したいって思う
 ことないから正直あんまり共感できないんだよね。」
 「えっ、なんかごめん…。」

 あんまりこういう話はしてこなかったから、恋愛脳の友人にはショックだっただろうか。

 「何かしたいことないの?ほら、恋愛以外でもさ。」
 「えー…特になにもないかな。」
 「えー?!私たちまだ若いのに、つまんないよそんな 
 人生!あれでしょ、七夕の願い事とかでも健康第一っ
 て書くタイプでしょ。」
 「そうだけど、それは別にいいじゃん。」
 「なんか楽しみ事見つけようよ!私と!丁度彼氏もい
 ないから、放課後フリーだし!」
 「えぇ、寂しいことを紛らわしたいだけじゃない
 の。」
 「違うし〜!何か見つかるまで私付き合うから!来年
 の七夕で具体的な願い事を書かせてやるわ!」
 「何、その意気込み。でもまぁそこまでいうなら、お
 願いしようかな…。」
 「よーし!じゃあ早速明日から実行ね!」

 正反対な私たちだけど、私は隣に友人がいてくれるだけで毎日が楽しい。この日々がずっと続けばいいな…これが私の願い事、なんてことは恥ずかしくて言えないけど。


6/29/2025, 11:39:02 AM

 

 「おっ今日は夏の大三角がよく見えるね〜。キレイだ
 ね。」
 「こんな明るい場所でも星が見えるの、いいね。」
 「えっ、眼鏡かけてても見えないの?」
 「眼鏡かけてたら見えるけど、外したら何も見えな
 い。ただの青暗い空だよ。」
 「かけて見えるならいいじゃん、見えないよりか
 は。」
 「でもなんか裸眼で見えた方が、"本物の星を見て
 る"って感じがして良くない?」
 「そうかなー。」
 「私はこの目で星を見たいんだよね。自分の生まれ持
 った目で、星を見ることができたらさ、私はこの美し
 い星を見るために産まれてきたんだ…!って思えてな 
 んか素敵じゃない?」
 「裸眼で見てもレンズを通して見ても、星は星だよ。 
 みんなおんなじ星だよ。」
 「…やはり本物が見えている者は言うことが違う
 な。」
 「なにそれ、一緒だってば〜。」

 時々、私の思いつかないような考えを話す彼女はとても面白い。
 私なんて星が裸眼で見えようが見えまいが、正直どっちでもいい。
 私たちはまだまだ青くて浅い若者だけれど、彼女は青くて深いような、私にない色を持っている。そういうところに少し、憧れている。

6/27/2025, 2:58:59 PM

 中二の頃、テレビ番組で見た"宇宙との交信"に興味を持ち、その日から毎晩、自作の発信機から自分の声を空に向けて放った。
 宇宙との交信をし始めて一年が過ぎ、今日で最後にしようと決めていた夜。初めて声が返ってきた。
 「ダレ?」
 明らかに宇宙人ではなく、地球人らしき人間の声であった。少しがっかりしたが、初めて返信がきたということに嬉しさも感じていた。
 「あの」
 「は、はい」
 「…人間ですか?」
 「え?あ、はい。」
 「なんだ人間かよ。ぬか喜びさせやがって…」
 「ええ?」
 それはこっちのセリフだよと思ったが、そんなこと初対面の人間に言えなかった。
 「あ、すみません。てっきり宇宙人かと思ったら、人間だったから…すみません。」
 「もしかして、君も宇宙との交信を…?」
 「え?そうですけど、あなたも…?」
 「ええ」
 なんとも言えない気まずい空気が流れた。宇宙人との交信なんていう馬鹿馬鹿しい行為をしている地球人が今ここで巡り合ってしまったのだ。
 「すみませんホント。では、失礼し─」
 「あ、待って。…いつからですか?」
 「え?」
 「その、宇宙との交信は」
 「あー、そうですね…中一の頃からですかね…ハハ。」
 「へぇ、早いですね…」
 「早い?」
 「僕は中二の頃なんで…」
 「中二…そうなんですね。」
 思わず、話を続けてしまったが、これが限界であった。僕はこの出会いに縁を感じていた。
 「あのー、もしよかったら、これからは僕と交信しませんか?」
 「え?」
 「地球人ですみませんけど…そのー会話の練習相手が欲しくて」
 「…まあ僕なんかでよければ。」
 「じゃあ、明日またこの時間に。」
 「はあ…」

 相手は全然乗り気ではなさそうだったが、次の日の夜、約束の時間にまた発信機に向かって呼びかけた。
 「あーもしもし」
 「・・・」
 「聞こえてますか?」
 「…どうも」
 「えっ」
 「え?」
 意外にも返事がきて、驚いてしまった。
 「あ、どうも。」
 「今、返事がきて驚きました?」
 「えっ、いや…」
 「本当はかけようか迷ったんですけど、自分以外に宇宙交信している人なんて初めて会って、なんか嬉しくて…もっと話したいなって思ったんですよね。」
 「…」
 「ハハこんなこと言われても迷惑ですよね。」
 「いや、そんなこと!僕も全く同じ考えで、だから昨日無理やり約束したんだし…アハハなんか照れるけど、嬉しいな。」

 僕たちは顔も知らない赤の他人だが、それがなんだか居心地が良くて、なんでもない話、ちょっぴり大切な相談事なんかもするような仲になった。



 しかし、交信は突然途切れてしまった…。
 君からの最後の声が途絶えたあれから何年の時が経っただろう。
 今でも覚えている君の声、話したこと…でもどんな顔かは知らない。
 どこかで縁があるのなら、またもう一度君と話せたらと、今でも時々君のことを思い出す。

6/25/2025, 2:43:17 PM


 「せっかくの大学生活なのに、何してんだろうね。」
 「それなー。」 

 もうずっと画面越しでしか会えていない友人の声が、
 部屋に響く。 

 「リモートもうなんか飽きちゃったな。」
 「本当にね。最初は超楽じゃん!ってむしろ喜んでた
 のに、なんかつまんないよね。」
 「最近いつ人に会った?」
 「えー、いつだっけな…。忘れたわ…。」
 「まじか。」
 「だって授業もリモートだしさ。会う意味?必要?が
 ないじゃん。」
 「確かにそうだけど、そう言われるとなんか虚しい
 な…」
 「いや、会いたいんだよ、会いたいんだけどさ。なん
 というか、今のご時世会う明確な理由が必要だよねっ
 てこと!」
 「気軽に会いにいけないよね。あぁーこんなのいつま
 で続くんだろ。」
 「まぁ、今を嘆いたって仕方ないよ。次会う時どこで
 遊ぶか決めようよ。」
 「それもそうだね。どこにしよっかー…」
 
 外の空はこんなにも澄んでいるのに、どこか空気は淀
 んでいる。お天気日和の外を横目に、私たちは次に会
 う約束の話をした。