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 「おっ今日は夏の大三角がよく見えるね〜。キレイだ
 ね。」
 「こんな明るい場所でも星が見えるの、いいね。」
 「えっ、眼鏡かけてても見えないの?」
 「眼鏡かけてたら見えるけど、外したら何も見えな
 い。ただの青暗い空だよ。」
 「かけて見えるならいいじゃん、見えないよりか
 は。」
 「でもなんか裸眼で見えた方が、"本物の星を見て
 る"って感じがして良くない?」
 「そうかなー。」
 「私はこの目で星を見たいんだよね。自分の生まれ持
 った目で、星を見ることができたらさ、私はこの美し
 い星を見るために産まれてきたんだ…!って思えてな 
 んか素敵じゃない?」
 「裸眼で見てもレンズを通して見ても、星は星だよ。 
 みんなおんなじ星だよ。」
 「…やはり本物が見えている者は言うことが違う
 な。」
 「なにそれ、一緒だってば〜。」

 時々、私の思いつかないような考えを話す彼女はとても面白い。
 私なんて星が裸眼で見えようが見えまいが、正直どっちでもいい。
 私たちはまだまだ青くて浅い若者だけれど、彼女は青くて深いような、私にない色を持っている。そういうところに少し、憧れている。

6/29/2025, 11:39:02 AM