わたしは、あなたの眼差しが好きだった。
全く生気の無い、しかし、どこか秘めた悟ったような目が好きだった。
あなたの灰色の目と、赤色の髪が好きだった。
あなたを色恋の目で見たことは無かったけれど、
どこか、母親のような目で見ていた。
きっと、あなたを昔から知っていたからだろう。
あなたには、本当に助けられた。
当時には珍しく、わたしを女だからと軽蔑すること無く、
主君として仰ぎ、奉ってくれた。
あなたが居なければ、わたしは早々に死んでいただろう。
わたしたちの生きている時代は、封建主義と民主主義の狭間の時代。
ポンパドゥール夫人、女帝マリア・テレジア、哲人王フリードリヒ、
などの著名な人物とわたしたちの歳近く、やっとの思いで生かされた。
老いた者の愚痴だが、本当に大変な時代だった。
しかし、あなたという青年が心身を削ってまで努めて、
わたしを、わたしたちの家を荒波から生かしてくれた。
この恩は、永遠に忘れられぬよう後世に語って伝えましょう。
あなたは、わたしより十歳は若いのに、
あなたの齢は、高く見積もっても…まだ三十五なのに、
欲を言えば、もう少しだけ……、
わたしのような老いた者より生きて欲しかった。
救いは、あなたの死顔は本当に安らかだったこと。
それだけは、本当に良かった。
あなたの生涯は、わたしから見れば本当に波乱の連続で過酷だったから。
あなたの主君として、最後の命令です。
どうか、これからは安らかに睡るが良い。
今迄、本当にありがとう。
Who are you?
A gray-eyed, red-haired man picks up a baby.
It was powdered snowing that day.
「I like a listen your answer.」
My husband is a said.
「You already know.」
I am a said.
He looked like he was about to start crying.
「I understand.
Because,I want to help you, even if it's just a little bit.」
He exclaimed with all his might.
She smiled apologetically.
「See you liter.」
She turns away and leaves.
「Wait!」
I can run and run, but I can't keep up with you.
You are going farther and farther away.
This is where I woke up.
「You came to me in a dream.」
I told the picture so.
The picture showed a beautiful, smiling woman.
あなたの背を見て思う。
何故、そこまで自分を追い詰めて、領民を優先するのだろう。
何故、多くの孤児と家族、同じ一族の家々に強いてまで、
この国の安寧を保つのだろう。
この国は極めて裕福で平和で、領民は思想、宗教、出生を問わず、
その恩恵を享受することが出来る。
楽園、そう呼ばれるに相応しい素晴らしい国だと思う。
しかし、その恩恵の背景には多大なる犠牲が伴っている。
公爵家の人々は、その基準に満たなければ処刑され、
武器や道具などと呼ばれる最下層の人々が、年齢の近い彼らの側近が、
彼らの名前など全てを受け継ぎ、成り変わってしまう。
武器は、幼き頃から他国へ戦争をする。
道具は、幼き頃から他国へ密偵をする。
武器と道具は、多くが幼くして命を奪われる。
その中から成人し、公爵家の人々の側に仕えられる者は本当に僅かだ。
公爵家の人々も大半が武器か道具に成り変わられる。
絶対的なルールと、それにより選ばれた優秀な人々による統治。
そうして、生まれた完璧に等しい国。
確かに、この国の人々は幸せだろう。
しかし、到底口には出せないが、とても歪だと思う。
ここまでの犠牲を出しながらも、多くの人々が尊重される国。
そして、あなたは辛うじて生き残った。
あなたは、常に領民を想う。
あなたは、常に情勢に気を遣う。
それ故、あなたの身体はもうボロボロだ。
毎日のように薬を飲み、辛うじて生きている。
どれだけ、お願いしても、あなたは身を粉にして働き続ける。
先日、彼の大国で革命が起こり滅ぼされたように、
このままでは、この国は制度疲労を起こして滅んでしまう。
あなたと最下層の人々の負担を、少しでも減らしたい。
どうしたら、この国の安寧の犠牲を終わらせられるのだろう。
「これだから、人間は。」
金色の瞳の者は、吐き捨てるように言う。
「そのように人間と括るな。」
碧色の瞳の者は、金色を警告する。
「気持ちは分からなくも無いけど、その言い方は語弊を招く。」
銀色の瞳の者は、金色に共感しながらも、碧色を擁護する。
「われらが多様であるように、人間も多様だと私は思う。」
藤色の瞳の者は、丁寧に意見を述べる。
彼らの容姿は、まだ二十歳、そこらのように見える。
しかし、その雰囲気は歳を重ねた賢者のように威厳に満ちていた。
彼らが揃うと、それはまるで神々の会議のようだった。
「さあ、どう裁く。この人間たちを。」
金色は、冷酷な笑みを浮かべ、皆に問う。
「この管轄は、人間だろう。
われらが口出しすべきでは無い。」
碧色は、無表情で答える。
「しかし、この度の件はわれらにも被害が及んだ。
ならば、多少圧力を掛けるべきでは。」
銀色は、少し怒りの籠もった声で答える。
「この度の件、確かにわれらに被害が及んだ。
しかし、私の管轄には被害報告は無い。
私としてはもう少し全容の詳細を把握し、
思考を巡らす余地があるように思う。」
藤色は、冷静に穏やかに答えた。
「私は、即刻死刑に処すべきと考える。
戸籍ごと存在しないことにすべきだ。」
金色は、率直に述べた。
「貴殿の管轄に最も多くの被害が及び、
尚且つ、我々にも被害が有った事で、
今回の会議を開く事となった。」
碧色は、述べる。
「前置きは良い、さっさと貴殿の意見を述べよ。」
金色は、苛立ちながら述べる。
「まあ、そう焦らさなくとも。
そのように苛立てば人間のように愚かになる。」
銀色は、金色を諌める。
「しかし、この度の件はかなり複雑のようだ。
ここは、互いの得意とする分野ごとに分担しよう。」
碧色は、提案する。
「私は、その提案に賛成する。
金色は被害報告の内訳を、碧色は事の発端の解明を、
銀色は関係者の聴取を、私は人員を貸しましょう。
そして、私は全容をより明確に把握する役も担いましょう。」
藤色は、碧色の提案を具体的に述べた。
「異論は無い。」
銀色は、同意する。
「処罰対象の断罪及び刑罰は、私に最終決定権が有るなら異論は無い。」
金色は、同意を示すが、条件を付け加える。
「私の管轄のみに被害を齎した場合以外なら、貴殿の意見に賛同しよう。」
碧色もまた、同意を示すが条件を付け加えた。
「私は貴殿らが提示した条件及び、その提案に賛同しよう。」
藤色は、賛同を示した。
「私も賛同する。」
碧色は、賛同を示した。
「私も先ほどと同じく、賛同する。」
銀色もまた、賛同を示した。
「私も異論無く、右に同じく賛同しよう。」
金色は、賛同を示した。
気が付けば、夜は明けていた。
彼らは、同意書にそれぞれ署名し、シーリングリングを押した。
風の噂で、この度の件は解決したと聞いた。
彼らと人間、
双方共に禍根を遺さず、
双方共に合意を得た、最適解を導けたようだった。