kiliu yoa

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11/12/2024, 4:40:45 AM

かつて、私は落ちこぼれだった。

生まれながらに身体は弱く、

武の才覚は全くと言って良い程に無かった。

此の家の嫡流にして長子でありながら、嫡子の候補では無かった。

日々、弟たちや妹たちは修練を積むことが出来る身体が羨ましく、

日々、武術が上達するさまを見ては、兄として、長子として、

その役目を目に見えて担えていない事に、自分の存在意義を問うていた。

そんな時期もあった。


しかし、先の事とは分らぬもので、皆の推薦で私は此の家の当主と成った。

あまり前例の無い、非常に稀有なことであった。

先代と弟たち妹たちが盤上一致で、私を当主へ推薦してくれた事に、

私は涙が溢れた。

これまで、私に出来ることを少しずつ努めてきた。


『出来ぬからと、為せぬからと、負い目を覚えることは無い。

 今、出来ることを少しずつ努めれば良い。』

両親から贈られた、私の礎となった大切な言葉。

だから、私は落ちこぼれであったが、落ちぶれることは居なかった。

今日まで支えてくれた、両親・弟たち・妹たち、

その姿をずっと見守ってくれていた、親しき人々には感謝しかない。

本当にありがとう。

これからは此の家の当主として、私に出来る役目を果たして行きます。



11/8/2024, 1:32:11 PM

『意味がない』とは、何と定義すれば良いのだろうか。

私は、未だに『意味がない』という意味を理解出来ない。

何故、そのような境地に至るのかも解らない。

私は、何事にも『意味がない』などということは全く無いように思う。

『意味がない』、その言葉を何故発することが出来るのだろう。

私の生涯に置いて、『意味が無い』などという言葉は、

挑戦する者を見下し嘲笑するための虚構に過ぎないように、私は思う。

挑戦しないからといって、悪では無い。

寧ろ、保守的な現実主義は世界の秩序を守り、

平和を保つためには、必要不可欠だと思う。

しかし、だからと云って挑戦する者を見下し嘲笑するのは、

違うように思えた。

纏めると、思考が偏るのは前提として、公平に扱い、尊重し合い、

互いに意識し、共存することを認め合うことが大切だと、私は思った。










11/8/2024, 12:13:19 AM

「父上、何故ですか。何故、シモンを……。

 私から、何故……シモンを奪ったのですか。」

まだ、うら若き青年は感情の波を抑えながら、父に必死に抗議する。

父と呼ばれた、厳格な雰囲気を纏う男性は鋭い眼差しを青年に向ける。

「解らないか。」

突き離したように、冷たく男性は問う。

「理解出来ません。」

青年は、はっきりと鋭い眼差しで父に屈せぬよう宣言する。

「そうか、ならば…考えてみよ。

 何れ、其の問の解が解るようになる日まで。」

冷静に簡潔に確実に、男性は父としての役目を果たす。

「どういうことですか。」

青年は、冷静になるよう己に言い聞かせながら、必死に訴える。

「連れて行け。」

男性は、側近に命じた。

「承知しました。」

側近は、従順に命を遂行する。

「何故ですか。父上!」

青年は納得出来ず、必死に抵抗する。

「もう、お前に言う事は無い。」

男性は、青年に冷たく言い放つ。

野生の獣のような眼差しを青年は、父に向ける。

男性は鼻で笑い、青年を書斎から退室させた。













11/6/2024, 11:31:15 AM

「雨だ。」

私は思わず、そう呟いた。

朝の天気予報では、『今日は、一日中快晴です。』

と、予報士さんは言っていたように思う。

あの予報士さんは、今まで見てきた中では天気予報を外すことが無かった。

しかし、今日は外れたらしい。

なんだか、今日…このような瞬間に立ち会えて光栄思えた。

恥ずかしながら、この度外れて、初めてあの予報士さんの有難みを知った。

「ありがとう。いつも私のあたり前を支えてくれて。」

何となく呟いてみた、日々の感謝を込めた言葉を。


こんな感じに自分が感じていないだけで、

日々の自分のあたり前を支えてくれている、

数え切れない人々が居るのだな。

今、初めて気付いたよ。


見知らぬ人々、顔見知りの人々、親しき人々、いつもありがとう。



10/30/2024, 1:19:53 PM

「将来、わたしと結婚して。」

私が齢十八の成人して間もない時、まだ齢八の少女にプロポーズされた。

「えっ……。」

ここで気の利いた言葉を返せたのなら、

格好が付いたのだが、何せ、今生には全く縁のなかったことだったので、

私は驚いて、頭が真っ白となり固まった。

「あら、もしかして、ガールフレンドがいるの?」

彼女の大人びた回答に、周囲の大人たちは笑う。

前者は、腹を抱えて大笑いして彼女を称える者。

後者は、彼女のプロポーズを受けるべきだと賛成の意を示す者。


私の父は、彼女に問うた。

「なぜ、息子が良いと思った?」

彼女は、答えた。

「直感です。

 この人と結婚すれば、わたしは幸せになれる。そう直感しました。」

父は、満足そうに答えた。

「君は、見る目があるね。これは、将来が楽しみだ。」

そして、彼女の頭を撫でた。


それが彼女、私の妻となる人との出会いだった。



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